「どうして友人の成功を素直に喜べないんだろう?」そんな風に感じてモヤモヤしたことはありませんか?
- 仲の良い友達が出世して、祝いたいのに心がざわつく
- 同僚の成果が気になって、自分と比べてしまう
- SNSで家族や知人の幸せそうな投稿を見ると落ち込む
実はこうした感情には、自己評価維持モデルという心理学の枠組みが関係していると考えられています。これは「他人の成功が、自分の自尊心にどう影響するか」を説明するモデルです。
この記事では、
- 嫉妬と誇らしさの分かれ道
- 比較と反映という2つの仕組み
- 嫉妬を和らげる実践的な方法
を分かりやすく解説します。
心理学を知ることで、自分の気持ちを客観的に理解でき、人間関係もラクになるはずです。ぜひ最後まで読んでくださいね。
友人の成功に嫉妬する心理とは?
誰かの成功を目にしたとき、「素直に喜べない自分」に戸惑った経験はありませんか?
特にそれが親しい友人や同僚、あるいは家族であればあるほど、気持ちが揺さぶられやすいものです。
「素直に喜べない自分」に悩む人は多い
- 「友達の昇進を祝いたいのに、なぜかモヤモヤする」
- 「SNSで同級生の華やかな生活を見ると気分が沈む」
このような気持ちは、珍しいものではありません。心理学の研究でも、多くの人が同じような経験をする傾向が示されています。
嫉妬は自然な感情であり自己防衛の一部
嫉妬と聞くとネガティブに思えますが、実は自分の価値を守ろうとする自然な感情のひとつです。
例えば、動物が自分の縄張りを守るのと同じように、人も心の中に「自分の評価」や「居場所」を守る仕組みがあります。
そのため、身近な人の成功は「自分の立ち位置が揺らぐかもしれない」というサインとして心に響きやすいのです。
友人・同僚・家族との関係で特に強く出やすい
- 友人:一緒に成長してきた仲間だからこそ、差を感じやすい
- 同僚:同じ仕事環境にいるため、成果を比べやすい
- 家族:兄弟姉妹など、幼い頃から比較の対象になりやすい
このように、身近で大切な人ほど、感情の動きも大きくなる傾向があります。
ただし、これは「必ず嫉妬する」ということではなく、状況や心の状態によって揺れやすい心理の傾向と理解すると安心できます。
自己評価維持モデルとは?心理学で解説

友人や家族の成功に心が揺れるとき、その背景を説明する理論のひとつが「自己評価維持モデル(Self-Evaluation Maintenance Model)」です。これはアメリカの心理学者アブラハム・テッサーによって1980年代に提唱された考え方で、人が自分の評価をどう守ろうとするのかを示しています。
アブラハム・テッサーが提唱した心理学モデル
テッサーは、人間関係の中で「他人の成功や失敗が自分の気持ちにどう影響するか」を研究しました。
特に、親しい人の成果に対して「なぜ誇らしく感じるときと、落ち込むときがあるのか」を説明するために、このモデルを打ち立てました。
「比較」と「反映」の2つの仕組み
自己評価維持モデルでは、人が他者の成功を受け止める際に、主に2つの働きがあるとされます。
- 比較(comparison)
→ 自分と相手を比べることで、「自分は劣っているのでは?」と感じる方向に働く。 - 反映(reflection)
→ 相手の成功を「身近な人の成果=自分にとっても誇らしいこと」として取り込む方向に働く。
この2つのバランスによって、同じ「友人の成功」でも、嬉しさや嫉妬など異なる感情につながりやすいと考えられています。
親密さと関心領域が感情の強さを左右する
ただし、どちらに働くかは「誰が成功したか」と「どの分野での成功か」によって変わります。
- 親密さ:親しい人ほど感情の動きが大きくなる傾向
- 関心領域:自分にとって大切な分野ほど比較になりやすい
たとえば、同じ友人の成功でも…
- 自分と同じ分野 → 比較が強まりやすい
- 自分に関係のない分野 → 反映として誇らしく感じやすい
嫉妬と誇りの分かれ道|比較と反映の違い

友人や同僚の成功を見たとき、ある時は嫉妬を感じ、またある時は誇らしく感じることがあります。自己評価維持モデルは、その違いを「比較」と「反映」という2つの仕組みで説明します。
同じ分野での成功は「比較」となり脅威になる
自分が力を入れている分野で親しい人が成功すると、「自分も頑張っているのに…」と感じやすい傾向があります。
これは「比較(comparison)」が強く働くためで、相手の成果を自分と並べてしまい、自分の評価が揺らぐ感覚につながるのです。
例:
- 同じ部署の同僚が昇進したとき
- 同じ趣味の仲間が大会で優勝したとき
関心外の分野での成功は「反映」となり誇らしさに変わる
一方で、自分があまり関わっていない分野で親しい人が成功すると、「すごい!あの人の友達でよかった」と誇らしく感じる傾向があります。
これが「反映(reflection)」です。相手の成果を自分の一部のように感じ取り、ポジティブな感情につながります。
例:
- 自分はスポーツに興味がないけど、友人がマラソンで好成績を出した
- 自分は芸術に詳しくないけど、家族がコンクールで受賞した
兄弟・友人・職場の事例で理解する
- 兄弟姉妹:同じ分野で比較されやすく、嫉妬が生まれやすい。
- 友人関係:共通の趣味や進路が重なると比較、関係のない分野だと誇りにつながりやすい。
- 職場:昇進・評価・売上など「成果が明確」な分野では比較が強まりやすい。
このように、「比較」か「反映」かの分かれ道は、自分と相手の関係性やその分野の重要度によって変化すると考えられています。
自己評価維持モデルの反映と防衛機制の同一化との関係

「自己評価維持モデルにおける反映(reflection)」と、フロイト派の防衛機制における同一化(identification)は、似ている部分もありますが、心理学的には異なる枠組みで説明されるものです。
🔹 共通点
- 他者の特徴や成果を自分に取り込む点で共通しています。
- 「親しい人の成功を、自分の誇りや価値として感じる」という点は、反映と同一化どちらにも当てはまりやすいです。
- 結果として、自己評価を高める役割を持つという点でも似ています。
🔹 違い
自己評価維持モデルの反映(Reflection)
- 社会心理学的な枠組み
- 他者の成功を「自分の評価に良い影響を与えるもの」として取り込む傾向
- 例:友人が賞を取ったとき「自分の周りにすごい人がいる」と誇らしく感じる
防衛機制の同一化(Identification)
- 精神分析的な枠組み
- 不安や劣等感を和らげるために、他者の特徴や価値観を無意識に自分に取り込むメカニズム
- 例:尊敬する上司の口調や考え方を自然と真似して安心感を得る
🔹 両者の関係性
- 反映は「関係性の誇り」として意識的に感じられることが多い
- 同一化は「不安を和らげる防衛」として無意識に働くことが多い
- つまり、表面的には似ていても、出発点(意識的な感情か、無意識の防衛か)と目的(誇りか、不安の低減か)が異なると考えられます。
👉 言い換えると、
- 自己評価維持モデルの「反映」=他者の成功を誇りとして共有する傾向
- 防衛機制の「同一化」=不安を減らすために他者を内面化する仕組み
という関係に整理できます。

自己評価維持モデルと他の心理学理論の関係
自己評価維持モデルは単独で使われるだけでなく、他の心理学理論と照らし合わせると理解が深まります。特に社会的比較理論や自己不一致理論と組み合わせて考えると、感情の揺れをより多面的に説明できます。
社会的比較理論(フェスティンガー)との違い
1950年代にレオン・フェスティンガーが提唱した社会的比較理論では、人は自分の能力や意見を知るために他者と比べる傾向があるとされます。
自己評価維持モデルも「比較」を重視しますが、親密さや関心領域によって感情の方向性が変わる点で発展的な枠組みといえます。

自己不一致理論(ヒギンズ)とのつながり
エドワード・ヒギンズが1980年代に提唱した自己不一致理論では、「理想の自分」「現実の自分」「義務の自分」のズレが感情を生むとされます。
自己評価維持モデルも、他人の成功をきっかけに「自分は十分にできていないのでは」と感じやすく、結果として不安や落ち込みの要因になる傾向があります。両者は「自己評価が揺らぐ仕組み」を異なる角度から説明していると考えられます。

嫉妬・劣等感・誇りの心理をどう位置づけるか
- 社会的比較理論 → 「比べる傾向」そのものを説明
- 自己不一致理論 → 「ズレによる感情」の仕組みを説明
- 自己評価維持モデル → 「他人の成功が自分に与える影響」の具体例を説明
このように整理すると、自己評価維持モデルは「人間関係における比較と誇りの心理」を捉えるのに適した理論だと理解できます。
なぜ嫉妬を感じるのか?感情の裏側

嫉妬という感情は、多くの人にとって扱いにくいものです。けれども心理学的に整理すると、「自己評価を守ろうとする働き」として理解できます。
自尊心(セルフエスティーム)を守る仕組み
人は誰でも、自分の価値を大切に保ちたいという欲求を持っています。これが自尊心(セルフエスティーム)です。
他人の成功を目にしたときに気持ちがざわつくのは、「自分の価値が下がってしまうのでは?」というサインとして働くことがあるからです。

嫉妬・不安・劣等感と自己評価の関係
- 嫉妬 → 他人と比べて自分の立場が揺らぎそうなときに生じやすい
- 不安 → 将来自分が追いつけないかもしれないという予期的な感情
- 劣等感 → すでに差があると感じたときの自己評価の低下
いずれも「自己評価を守る」ための心の動きであり、決して異常なものではなく自然な心理的反応のひとつです。
SNS時代に強まる比較の心理
近年では、SNSがこの心理をより強めやすいと言われています。
- 友人の「成功報告」や「楽しそうな投稿」がタイムラインに流れてくる
- それを見て「自分は取り残されているのでは」と感じやすい
SNSは日常的に比較のきっかけを提供するため、嫉妬や不安を感じやすい環境をつくり出しているとも考えられます。
嫉妬心を和らげるための実践方法

嫉妬そのものを「なくす」ことは難しいですが、うまく付き合って和らげる方法はあります。心理学的な視点をヒントに、日常で実践できる工夫を紹介します。
「自分の分野外」と意識する思考の切り替え
他人の成功を見たときに「自分と比べる対象」と捉えると苦しくなりやすいですが、自分の専門外・関心外の分野と意識すれば、比較の強さは弱まります。
- 例:「彼は営業で成果を出した。でも私は企画で力を発揮している」
→ 分野を分けて考えることで、心の負担を軽くできます。
友人の成功を「誇り」として取り込む方法
「反映」の仕組みを活かし、友人や同僚の成果を自分にとっても嬉しい出来事として受け止めるのも効果的です。
- 「あの人と一緒に働いているから、私も良い影響を受けている」
- 「友達が成功しているのは、自分の人間関係の財産でもある」
このように考えると、嫉妬が誇らしさや喜びに変わりやすくなります。
自分の自己評価を高める習慣(小さな成功体験・セルフコンパッション)
嫉妬がつらいときは、自分の自己評価を高める習慣を取り入れることも大切です。
- 小さな成功体験を積む:毎日のタスクを1つ達成するだけでも効果あり
- セルフコンパッション(自分への思いやり):失敗しても「誰にでもあること」と受け止める
- フィードバックを受ける:他者からの肯定的な意見で自己評価を安定させる
このような習慣は、嫉妬の感情を和らげるだけでなく、長期的に安定した自己評価を育てることにつながります。

まとめ|自己評価維持モデルを理解して人間関係をラクにする
ここまで見てきたように、友人や同僚の成功を見て心が揺れるのは、自己評価を守ろうとする心理の働きによるものと考えられます。自己評価維持モデルを知ることで、自分の感情を冷静に理解しやすくなります。
嫉妬は自然な感情であることを受け入れる
まず大切なのは、嫉妬を「悪い感情」と決めつけないことです。
嫉妬は誰にでも起こりうる自然な反応であり、自分の価値を守ろうとする心の仕組みのひとつにすぎません。
「比較」より「反映」を意識すれば関係は良好に
他人の成功を「自分と比べる材料」にするのではなく、「自分の周りの誇らしい出来事」と捉え直すと、人間関係がよりラクになります。
「比較」から「反映」への切り替えは、嫉妬心を和らげる有効な視点です。
心理学を日常生活に活かす視点
自己評価維持モデルを知っておくと、
- 友人の成功に複雑な気持ちを抱いたときに「これは心理学的に自然な傾向」と理解できる
- 自分の感情を客観視できるようになり、不要な自己嫌悪を減らせる
- 仕事や人間関係でも「誇り」として受け止める柔軟さが持てる
このように、理論を生活に取り入れることで、人間関係のストレスを軽くし、自分らしい在り方に近づくことができます。

