「人の不幸を笑っちゃいけない」と思っているのに、
つい他人の失敗や不幸話で笑ってしまったことはありませんか?
頭ではダメだと分かっていても、
なぜか笑いがこみ上げてくる――。
そんな自分に、後からモヤモヤした気持ちになる人も多いはずです。
本記事では、人が他人の不幸を笑ってしまう心理の仕組みを、
心理学の視点から分かりやすく解説します。
さらに、ブラックジョークが笑えるとき・笑えないときの違いや、
笑い話に変えるときの注意点、文化による感じ方の違いも取り上げます。
この記事を読むことで、
笑いを上手に使うためのヒントがきっと見つかるはずです。
なぜ人は他人の不幸を笑ってしまうのか|心理学で解き明かす理由

私たちは普段、「他人の不幸を笑うなんて、良くないことだ」と頭ではわかっていながら、思わずクスッと笑ってしまうことがあります。では、なぜ人は他人の不幸や失敗を笑ってしまうのでしょうか?
この現象は、いくつかの心理的メカニズムによって説明することができます。ここでは代表的な4つの理論をご紹介します。
①下方比較理論とは?|「自分より下がいる」安心感が笑いを生む心理
まず1つ目が、下方比較理論です。心理学者のフェスティンガーが提唱したこの理論は、「人は無意識のうちに、自分と他人を比べる」という性質を説明しています。
例えば、友人がプレゼンで大失敗した話を聞いたとき、自分も失敗する可能性にゾッとしながらも、「自分はまだマシかも」と思ってホッとすることがあります。これが下方比較です。
- 自分より不幸な人を見る
- 自分はそこまでひどくないと思える
- 結果として安心し、笑いが生まれる
このように、他人の不幸が自分の安心感を生むことが、人の不幸を笑う心理の一つの正体です。
②カタルシス効果|人の不幸話でスッキリする心理の正体
続いて紹介するのは、カタルシス効果です。カタルシスとは、心のモヤモヤやストレスが解消されてスッキリすることを指します。
たとえば、
- ドラマや映画で悲しいシーンを見て泣いた後に、気分が軽くなる
- 芸人の失敗談を聞いて「自分だけじゃない」と安心する
これらもカタルシスの一種です。他人の不幸話や失敗談を聞くと、
「ああ、自分だけがダメなんじゃないんだな」
という気持ちになり、ストレスが発散されるため、思わず笑ってしまうことがあるのです。
③緊張緩和理論|タブーを笑いに変えるメカニズム
三つ目のポイントは、緊張緩和理論です。これは、「笑いは緊張を解放することで生まれる」という理論で、ドイツの哲学者ヘルベルト・スペンサーや心理学者のフロイトらによって提唱されました。
ブラックジョークなど、タブーを含む話題は、
- 聞いた瞬間「ヤバい…」と緊張が走る
- しかしオチで「なーんだ」と緊張が一気にゆるむ
- そのギャップで笑いが起きる
という流れで成立します。つまり、緊張と緩和の落差が笑いを生むのです。だからこそ、ブラックジョークはうまく使えば笑いを生みますが、失敗すると笑えない空気になりやすいと言えます。
④シャーデンフロイデとは?|他人の不幸を喜んでしまう心理の正体
最後に紹介するのが、ドイツ語でシャーデンフロイデ(Schadenfreude)と呼ばれる感情です。これは、
- Schaden(不幸・害)
- Freude(喜び)
を組み合わせた言葉で、直訳すると「他人の不幸を喜ぶ感情」を意味します。
俗に言う、「人の不幸は蜜の味」と呼ばれるような感情です。
たとえば、
- 有名人のスキャンダルで盛り上がる
- 成功者が失敗するとスッキリする
などは、シャーデンフロイデの典型例です。
これは、人間の根源的な感情で、
- 社会的競争の中で「相手が落ちた方が自分の相対的立場が上がる」と無意識に思う
- 他人の失敗を見ることで自尊心が保たれる
という心理が隠れています。
もちろん、表立って「不幸を喜んでいる」とは言いづらいですが、誰にでも多少はこの感情があるのが現実です。
このように、人が他人の不幸を笑ってしまうのは、単なる意地悪心だけではありません。心理的な安心感やストレス解消、緊張の緩和など、いくつもの要因が複雑に絡んでいるのです。
「笑ってはいけない」とわかっていても、笑いが出てしまう理由は、私たちの心の奥にある人間らしい心理の表れとも言えるでしょう。

ブラックジョークとは?|笑えるものと笑えないものの境界線

ブラックジョークは笑いの世界でよく耳にしますが、笑えるときもあれば、まったく笑えないときもあるのが難しいところです。ここでは、ブラックジョークの意味や、笑える場合と笑えない場合の違いを詳しく解説します。
ただ、「ブラックジョークが笑えるかどうか」は、非常に個人差が大きいテーマです。
同じジョークを聞いて笑える人もいれば、不快に感じる人もいます。また文化や時代、聞く人との関係性によっても大きく変わります。
統一した基準を設けるのは難しいですが、この記事では一般的に「笑える」とされやすい特徴、「笑えない」とされやすい特徴を、あくまで傾向として紹介します。
ブラックジョークの意味と定義|どんなジョークが「ブラック」なのか
ブラックジョークとは、一般的に
- 死
- 病気
- 不幸
- 社会問題
など、人が普通は避けたいと思うテーマを笑いに変えるジョークを指します。
たとえば、
「僕の上司、ブラック企業すぎて帰り道に幽霊と仲良くなったらしいよ」
といった、死や苦労を笑いに変えるのがブラックジョークの例です。
本来は笑えないはずのタブーを笑いに変えることで、
- 緊張を緩和する
- 話題にしづらいことを話せる空気にする
といった効果もあります。
ただし、テーマが過激なだけに、笑いのセンスや場の空気を間違えると一気に空気が凍るリスクもあるのがブラックジョークの怖いところです。
笑えるブラックジョークの特徴|笑いが成立するポイント
では、笑えるブラックジョークとはどんなものでしょうか?ポイントは以下の通りです。
- 自虐ネタや自分の失敗談であること
- 誰かを傷つける意図がない
- 聞き手が共感できる程度の「あるある感」がある
- 話し方が軽妙で、深刻になりすぎない
- 笑いで緊張を解く構成になっている
例えば、
「オンライン会議で、カメラオフにしたつもりがオンのまま、昼ご飯の焼きそば食べてるところが全社員にバレたんだよね。」
という自虐ネタは、自分をネタにしているため、笑いに変えやすい典型です。
また、聞き手が「わかる!」と共感できる話題は、笑いが共有されやすく、ブラックジョークでも場を和ませることができます。
笑えないブラックジョークの特徴|どこからがアウトなのか
一方で、笑えないブラックジョークには以下の特徴があります。
- 弱者やマイノリティを直接攻撃する
- 病気や障害、事故など深刻すぎるテーマを嘲笑する
- 他人の容姿や家庭事情など、個人攻撃に近いネタ
- 誰も共感できないほど過激な内容
- 話し手の態度に悪意が見える
例えば、
「○○病の人って、見た目が面白いよね」
といった発言は、笑いではなく差別や誹謗中傷と捉えられやすく、場を凍らせてしまいます。
また、ブラックジョークは文化や個人の価値観によって許容範囲が大きく異なるため、
- 日本では笑えると思った話が、海外では即NG
- 仲の良い友人間では笑えるが、SNSに書くと炎上する
といったことも珍しくありません。
このように、ブラックジョークは
- 笑えるか笑えないかの線引き
が非常に難しいジャンルです。笑いを生むには、「自虐か」「共感できるか」「悪意がないか」といったポイントを意識する必要があります。
笑い話に変えるときに気をつけたいポイント|失敗談をネタにするリスクとコツ

ブラックジョークが笑いになるかどうかは、ネタの選び方や話し方次第です。特に、自分や他人の失敗談を笑い話にする際には、いくつかの注意点があります。
ここでは、笑いに変えやすい自虐ネタの使い方や、他人を笑いものにする危険性、そして文化による笑いの感じ方の違いについて解説します。
自虐ネタは笑いに変えやすい|安心感を生む理由と使い方
笑いを生む方法としておすすめなのが、自虐ネタです。自虐ネタとは、自分自身の失敗や欠点を笑い話にすることを指します。
自虐ネタがウケやすい理由は、
- 誰かを傷つけない
- 話し手が「自分を下げる」ことで場の空気が和む
- 聞き手が「自分も同じような失敗がある」と共感しやすい
という点にあります。
例えば、
「面接で緊張しすぎて、自分の名前を言い間違えました」
という話は、自分の失敗を笑いにしているため、場を和ませる良いネタになります。
ただし、自虐ネタも使い方を誤ると
- 「この人、自信がないのかな…」と思われる
- 繰り返しすぎて「またその話?」と飽きられる
などのリスクがあります。
自虐ネタは、ここぞという場面で、ほどよい頻度で使うのがコツです。
他人を笑いものにする危険性|嫌われるジョークとは?
一方で注意したいのが、他人を笑いものにするジョークです。
以下のようなジョークは特にリスクが高いと言えます。
- 弱者や少数派を笑う
- 病気や容姿などデリケートな話題をいじる
- 個人の秘密を暴露する
例えば、
「○○さん、この間ミスして上司にめちゃ怒られてたんだよ!」
といった話は、
- 当人がその場にいる場合は特に傷つく
- 聞き手も「次は自分が笑いものにされるのでは?」と身構える
という結果を招きます。
ブラックジョークを使う際には、
- 話題にする相手が傷つかないか
- 場の空気に合っているか
- 公の場で言うべき内容か
を常に考えることが大切です。笑いを取るつもりが、信頼を失うきっかけになるリスクがあるのが、他人をネタにするジョークの怖いところです。
文化・社会的背景による違い|日本と海外でのブラックジョークの受け止め方
さらに、ブラックジョークには文化的背景の違いが大きく影響します。
例えば、日本と海外では、
- 日本:家族や身近な人を守る意識が強く、個人攻撃に敏感
- 海外(特にアメリカや欧州):皮肉やブラックジョークが「ウィット(機知)」として評価される文化もあるが、同時に人種や差別表現には非常に厳しい
といった差があります。
有名な例が、アカデミー賞でのクリス・ロックとウィル・スミスの事件です。病気をネタにしたジョークに対して、
- アメリカでは「暴力は絶対ダメ」という批判が強かった
- 日本では「家族を守る行動」として擁護する声も多かった
というように、同じ出来事でも受け止め方がまったく違いました。
SNS時代の今、国内だけでなく世界中に言葉が届いてしまう時代です。文化や価値観の違いを理解しないまま発言すると、思わぬ炎上を招くリスクが高いといえます。
ブラックジョークを使うときは、
- 「相手の文化ではどう受け止められるか」
- 「誰が聞いている場なのか」
を意識することが大切です。
このように、笑い話に変えるには、
- 自虐ネタを上手に活かす
- 他人をネタにしない
- 文化的背景を考慮する
というポイントを押さえることが必要です。笑いは人を救うこともありますが、使い方次第で関係を壊す刃にもなり得るのが難しいところです。
まとめ|笑いの力と境界線

ここまで、人が他人の不幸や失敗を笑ってしまう心理や、ブラックジョークが笑えるか笑えないかの違いについてお伝えしてきました。
笑いは、私たちの心を軽くし、人との距離を縮める大きな力を持っています。ですが同時に、笑いには「限度」や「境界線」があることを忘れてはいけません。
「笑いの効用」と「限度」の重要性
笑いには、以下のような大きな効用があります。
- ストレスを和らげる
- 人間関係を円滑にする
- 緊張をほぐす
- 自分を客観視できるきっかけになる
しかし、どんなに笑いが大事でも、
- 他人を笑いものにする
- 弱者を攻撃する
- 文化や背景を無視する
などは、笑いの限度を超える行為です。
ブラックジョークのようにタブーに触れる笑いは、緊張を緩和し人を救うこともありますが、使い方を間違えると、相手や周囲を深く傷つける危険があります。
自分も相手も傷つけない笑い方とは
では、どうすれば自分も相手も傷つけずに笑いを共有できるのでしょうか?
大切なのは、以下のポイントです。
- 自分をネタにする「自虐」は比較的安全
- 相手の立場や気持ちを想像する
- 誰かを笑いものにするより「一緒に笑える話」を意識する
- その場にいる人の関係性や空気を読む
- 不安があるときは言わない勇気を持つ
笑いは人を救う力を持っていますが、使う側の思いやりと想像力が不可欠です。
ブラックジョークを使うなら知っておきたい心得
ブラックジョークを使う場面があるなら、以下の心得を忘れないことが大切です。
- 自虐ネタを中心にする
- 他人をネタにする場合は絶対に相手が笑える範囲にとどめる
- 公の場では使わない方が無難
- 文化や国によって許容範囲が違うと知っておく
- SNSには残るリスクがあることを常に意識する
ブラックジョークは、うまく使えば場を和ませたり、心の緊張を解く強力なスパイスです。ですが、誰かを傷つける笑いは本当の意味で面白いとは言えません。
