「相手の反応を見たくて、わざと距離を取ったり、嫉妬させたりしてしまう…」そんな経験はありませんか?
恋愛や友人関係、職場でも、無意識にやってしまうこの行動は「試し行動」と呼ばれます。相手の愛情や信頼を確かめたい心理から生まれるもので、短期的には安心できても、長期的には信頼を損なうことも。
この記事では、試し行動の5つの動機と5つの行動パターンをわかりやすく解説し、不安型や恐れ回避型などタイプ別の特徴、人間関係への影響、そして今日からできる改善のヒントまでお伝えします。
「試す関係」から「信頼できる関係」へ変えるヒントを、ぜひ最後まで読んでくださいね。
試し行動とは?大人にも見られる心理的な意味

試し行動の基本的な定義と特徴
試し行動とは、相手の愛情や信頼をわざと試すような行動のことです。
多くの場合、「この人は自分を大切にしてくれるのか?」「離れずにいてくれるのか?」を確認したい気持ちから生まれます。
特徴としては、
- わざと距離を置く
- 嫉妬させる
- 無理なお願いをする
- 連絡を遅らせる、または過剰に送る
など、直接「愛情があるか聞く」のではなく、相手の反応から確かめようとする点が挙げられます。
なぜ大人になっても試し行動をしてしまうのか
「試し行動」と聞くと、子どもが親の反応を試すような行動を思い浮かべるかもしれません。
しかし、大人でも恋愛や友人関係、職場などで無意識に行ってしまうことがあります。
その理由は主に以下の通りです。
- 過去の人間関係で裏切られた経験がある
- 幼少期に安心できる人間関係(安全基地)を十分に得られなかった
- 自分の価値を信じきれず、相手の反応で安心感を得ようとする
- 愛着タイプ(不安型・恐れ回避型)による心理的クセ
大人の試し行動は、言葉にしづらい不安や恐れの“間接的な表現”と言えます。
恋愛・職場・友人関係など日常に現れる場面例
試し行動は、日常のさまざまな場面で現れます。
恋愛の場合
- わざと返信を遅らせる
- 他の異性の存在を匂わせる
- 「本当に好き?」と何度も尋ねる
職場の場合
- 期限ギリギリで資料を出し、上司の対応を見る
- わざと報告を遅らせ、反応を観察する
友人関係の場合
- しばらく連絡を絶ち、相手から連絡が来るか試す
- 自分の困りごとにどこまで付き合ってくれるか見る
このように、恋愛や仕事、友情など幅広い場面で起こりうるのが大人の試し行動の特徴です。
試し行動が起こる5つの動機と背景心理

動機 | 説明 | 主に見られるタイプ |
---|---|---|
①見捨てられ不安型 | 相手が自分を見捨てないかを確認する | 不安型愛着 |
②拒絶回避型 | 相手が拒絶してこないか、安全な距離を測る | 恐れ回避型愛着 |
③支配・コントロール型 | 相手がどこまで自分の要求に応じるか試す | 支配的性格傾向/境界性パーソナリティ |
④信頼確認型 | 嘘や裏切りをしないか試す | 過去の裏切り経験がある人 |
⑤承認欲求型 | どれだけ自分を大事に思っているかを確かめたい | 自己肯定感が低い人 |
①見捨てられ不安型(不安型愛着)
見捨てられ不安型は、「相手に嫌われて捨てられるのではないか」という強い不安を抱えるタイプです。
この不安を和らげるため、相手の愛情を何度も確認しようとします。
特徴例
- 「私のこと本当に好き?」と何度も聞く
- 返信が遅いと何度も連絡する
- 自分が大切にされている証拠を求め続ける
背景には不安型愛着があり、幼少期に一貫した安心感を得られなかった経験が影響している場合があります。


②拒絶回避型(恐れ回避型愛着)
拒絶回避型は、相手と近づきたい気持ちと、傷つくのが怖い気持ちが混ざっているタイプです。
試し行動は、距離を取る形で現れることが多いです。
特徴例
- 急に返信をやめる
- 大事な話を避けて相手が切り出すのを待つ
- 関係が深まる直前にそっけなくなる
背景には恐れ回避型愛着があり、他者への信頼と不信が共存している心理が関わります。


③支配・コントロール型(境界性パーソナリティ傾向)
支配・コントロール型は、相手をどこまで自分の思い通りにできるかを確かめる試し行動を取ります。
愛情の確認というよりは、関係の主導権を握ることが目的の場合があります。
特徴例
- 無理な要求をして相手の対応を観察
- 急に態度を変えて相手を混乱させる
- 感情的になって相手の反応を見る
背景としては、境界性パーソナリティ傾向や、過去の関係で自分が弱い立場に置かれた経験などがあります。
④信頼確認型(過去の裏切り経験から)
信頼確認型は、過去に裏切られた経験があり、再び傷つかないために相手を試します。
動機は安全を確保したい気持ちです。
特徴例
- 相手が秘密を守るか小さなテストをする
- 約束をわざと変えて反応を見る
- 他の人の話を引き合いに出して態度を確認する
⑤承認欲求型(自己肯定感の低さ)
承認欲求型は、「自分には価値がある」と感じるために相手の反応を必要とするタイプです。
試し行動は承認を得る手段になっています。
特徴例
- 過剰に褒められたがる行動
- 嫉妬を引き起こして「特別扱い」を確認する
- 頼みごとをして「断られないか」を確かめる
背景には自己肯定感の低さがあり、相手の反応が自分の価値の証明になってしまっているケースです。
試し行動の5つの行動パターンと具体例

行動パターン | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
関与型(近づく) | 直接的に愛情確認や干渉を増やす | 「私のこと好き?」と何度も聞く、何度も連絡 |
回避型(距離を取る) | 距離を置いて相手の反応を見る | 急に音信不通、そっけない態度 |
挑発型(嫉妬させる) | 他の異性や競合を匂わせる | SNSで異性との写真を投稿 |
負担型(試練を課す) | わざと困難や要求を増やす | 無理なお願いをして反応を見る |
沈黙型(反応待ち) | 話題や重要な返事をあえて保留 | 大事な話を持ち出さないで相手が切り出すか観察 |
①関与型(近づく)― 愛情確認や干渉を増やす行動
関与型は、相手との距離を縮めることで愛情や関心を確かめようとするパターンです。
不安型愛着に多く見られ、「近づけば安心できる」という思考が働いています。
具体例
- 「私のことどう思ってる?」と繰り返し聞く
- 頻繁に連絡を送る
- 相手の行動予定を細かく知ろうとする
②回避型(距離を取る)― 反応を見るために距離を置く行動
回避型は、わざと距離を置き、相手が追ってくるかどうかで愛情を測ります。
恐れ回避型愛着に多く、「近づくのが怖いから相手の出方を見たい」という心理が背景にあります。
具体例
- 急に返信をやめる
- 会う約束を先延ばしにする
- 連絡の頻度を減らす
③挑発型(嫉妬させる)― 他者を引き合いに出す行動
挑発型は、相手の嫉妬心を刺激して、自分への関心や愛情を確かめようとします。
短期的には反応を引き出せますが、長期的には信頼を損なう危険があります。
具体例
- SNSに異性との写真を載せる
- 他の人の魅力をほめる
- わざと異性の話題を出す
④負担型(試練を課す)― 要求を増やして相手を試す行動
負担型は、あえて相手に負担をかけ、どこまで受け入れてくれるかを見るパターンです。
支配・コントロール型の試し行動でよく見られます。
具体例
- 無理なお願いをする
- 短期間で多くの要求をする
- 突然予定を変える
⑤沈黙型(反応待ち)― 大事な話を避けて相手の出方を待つ行動
沈黙型は、あえて重要な話をせず、相手から切り出してくるかで愛情や信頼度を測ります。
拒絶される不安や、直接的な対立を避けたい心理が背景にあります。
具体例
- 関係性についての話題を避ける
- 問題があっても沈黙する
- わざと曖昧な返事をする
不安型と恐れ回避型で異なる試し行動の特徴

不安型の試し行動は“近づく”形で現れやすい
不安型愛着の人は、「相手に見捨てられるのが怖い」という気持ちが強く、試し行動も距離を縮める形で表れやすいです。
愛情や関心を何度も確認し、安心感を得ようとします。
例
- 頻繁に連絡を送る
- 会う約束を増やす
- 愛情表現を求める質問を繰り返す
このパターンは、一時的に安心できますが、相手に「重い」と感じさせるリスクがあります。
恐れ回避型の試し行動は“距離を取る”形で現れやすい
恐れ回避型愛着の人は、「近づきたいけれど拒絶されるのが怖い」という矛盾した感情を抱えています。
そのため、試し行動は距離を置く形で出やすくなります。
例
- 急に連絡を減らす
- 会うのを先延ばしにする
- 重要な話を避ける
この行動は相手を不安にさせやすく、関係がすれ違う原因になります。
見捨てられ不安試し行動との違い
見捨てられ不安試し行動は、不安型愛着の一部としてよく見られるもので、「捨てられたくない」という気持ちが行動の中心にあります。
一方で恐れ回避型は、「捨てられるのも怖いし、近づくのも怖い」という二重の不安を持つのが特徴です。
違いをまとめると…
タイプ | 行動の方向性 | 中心となる不安 |
---|---|---|
不安型 | 近づく | 見捨てられる不安 |
恐れ回避型 | 距離を取る | 拒絶される不安+見捨てられる不安 |
愛着タイプとの関連まとめ
- 不安型愛着 → 関与型・挑発型・見捨てられ不安型が多い
- 恐れ回避型愛着 → 回避型・沈黙型が多い
- 回避型愛着(安定ではない方) → 回避型が多いが、試し行動自体は少なめ
試し行動が人間関係に与える影響
短期的な安心感と長期的な信頼低下
試し行動は、短期的には安心感を得られることがあります。
たとえば、嫉妬させて相手が慌てて愛情表現をしてくれた場合、「やっぱり私のことを大事に思ってくれている」と感じられるでしょう。
しかし、この効果は一時的なことが多いです。
何度も繰り返すと、相手が「信頼されてないのかも…」と感じて、関係が悪くなる場合もあります。
試し行動は、信頼を強化するどころか、削ってしまう危険があります。
相手の負担感・疲弊感を招くリスク
試し行動は、相手に心理的な負担をかけます。
「また試されている」と感じると、次のような感情が生まれやすくなります。
- 疲れる
- 面倒くさい
- プレッシャーを感じる
- 本音で接しづらくなる
結果として、相手が距離を置く方向に動いてしまうこともあります。
無意識に関係を壊してしまう悪循環
試し行動が続くと、次のような悪循環が起きやすくなります。
- 不安や恐れから試し行動をする
- 相手が負担を感じて距離を取る
- 距離ができてさらに不安になる
- 不安を埋めるためにまた試し行動をする
このサイクルは本人が無意識に行ってしまうため、自覚と改善のきっかけがないと断ち切るのが難しいです。
だからこそ、意識して行動パターンを変える必要があります。
試し行動を減らすためのヒント

不安や恐れを言葉で伝える練習
試し行動は、直接的に気持ちを伝えられないときの代替手段になっていることが多いです。
そのため、まずは不安や恐れを素直な言葉で表現する練習が効果的です。
例:
- 「最近ちょっと距離を感じて、不安なんだ」
- 「返事が遅いとき、嫌われたのかなって心配になる」
こうした言葉は、試し行動よりも相手に誤解されにくく、建設的な会話につながります。
ただし、関係やタイミングによっては、これらの言葉が「重い」と受け取られる可能性もあります。
そこで、次のような工夫をすると、相手にプレッシャーを与えにくくなります。
重くならないための伝え方の工夫
- 事実+感情で伝える
「最近返信が少し遅いと感じて、不安になることがある」 - 話す前にワンクッション置く
「ちょっと話してもいい?」と了承を得てから話す - “あなた”ではなく“私”を主語に
「あなたが〜だから不安」よりも「私は〜と感じる」で伝える - ポジティブで終える
「だから、こうできたら嬉しいな」と希望や感謝を添える

自己肯定感を高める習慣
試し行動は、自分の価値を相手の反応で測ろうとする心理から生まれることも多いです。
そのため、相手の言動に依存しない自己肯定感を育てることが大切です。
習慣例:
- 小さな成功や達成を記録する
- 感謝日記をつける
- 自分を褒めるセルフトークをする

信頼関係を築くための小さな成功体験
信頼関係は、一度に築けるものではなく、小さな安心体験の積み重ねによって強くなります。
「話しても大丈夫だった」「頼っても受け止めてもらえた」という経験を意識的に増やしましょう。
ポイント:
- 約束を守る
- 小さなお願いから始める
- 安全な話題で自己開示する
愛着理論を理解し、自分のパターンを知る
試し行動の背景には、愛着タイプが関わっていることが多いです。
自分が不安型なのか、恐れ回避型なのかを理解すると、行動のクセを客観的に見られるようになります。
学び方:
- 愛着スタイル診断を受ける
- 心理学の入門書を読む
- カウンセリングや自己分析を試す
自分のパターンを知ることは、試し行動を減らすための第一歩になります。


