「また失敗した。なんで私はこうなんだろう」
気づくと自分を責める言葉ばかりが頭の中を巡り、心が苦しくなることはありませんか?
頑張り屋さんほど、自分に厳しくなりすぎてしまうもの。
けれど、その背景には育ちや心のクセといった、意外と深い理由が隠れています。
この記事では、自分を責める癖の原因や、自分に厳しい人の特徴をわかりやすく解説し、
誰でも今日から試せる具体的な直し方をご紹介します。
自分を責める癖とは?どんな状態なのか

「自分を責める癖」とは、失敗したりうまくいかないことがあったときに、必要以上に自分を責めたり、自分の価値を低く見積もってしまう心のクセのことを指します。
誰でも反省することはありますが、この癖が強い人は、反省を超えて自分自身を傷つけるような言葉を心の中で繰り返してしまいがちです。
「自己否定」と「自己批判」の違い
よく似た言葉に「自己否定」と「自己批判」があります。
- 自己否定は、自分の存在そのものを「ダメだ」「価値がない」と感じる状態です。例えば、「私は生きている意味がない」「何をやっても無駄」と思い込むような感覚です。
- 一方、自己批判は、自分の行動や能力の一部分に対して「なんであんなことを言ったんだ」「もっと頑張れたはず」と厳しく責める状態です。
つまり、自己否定は「自分そのものがダメ」と思うこと。自己批判は「自分の一部や行動がダメ」と思うこと、と言えます。
自己批判は、適度であれば反省や成長に繋がる側面もありますが、行き過ぎると心をすり減らしてしまう原因になります。

自分を責める癖がもたらす心への影響
自分を責める癖が続くと、心には大きな負担がかかります。
例えば、
- 落ち込みやすくなる
- 自信を失う
- 物事を悪い方向に考えがちになる
- 人間関係がぎくしゃくする
- うつや不安障害を引き起こすリスクが高まる
「私はダメだ」という思い込みが強くなると、挑戦する意欲も奪われてしまいます。結果として、人生がどんどん苦しく感じられてしまうのです。
どんな人が自分を責めやすいのか
では、どんな人が自分を責めやすいのでしょうか。主な傾向は以下の通りです。
- 真面目で責任感が強い人
- 完璧主義の人
- 人に嫌われたくないと思う人(対人不安が強い人)
- 過去に厳しく育てられた人
- 失敗を極度に恐れる人
こうした人たちは「もっと頑張らなきゃ」「失敗してはいけない」と自分を追い込みやすい傾向があります。
また、心の中に「内的批判者」と呼ばれる、自分を否定する声を持っている場合も多いです。例えば心の中で「お前はダメだ」「ちゃんとしろ」と囁く声です。
自分を責める癖の原因|なぜ過剰に責めてしまうのか?

「自分を責める癖」は、ただの性格ではなく、いくつかの心理的な仕組みや過去の経験に深く関係しています。ここでは、その主な原因を解説していきますね。
心理学で見る「内的批判者」の正体
自分を責める人の心の中には、しばしば「内的批判者(インナークリティック)」という存在がいます。
これは、まるで頭の中に住んでいる別の自分のようなもので、
- 「お前はダメだ」
- 「もっと頑張れ」
- 「失敗するなんて情けない」
といった厳しい言葉を繰り返し囁いてきます。
例えば、仕事でミスをしたとき、普通の人なら「次は気をつけよう」と思うだけですが、自分を責める癖がある人は「自分は本当に使えない人間だ」と過剰に自分を責めてしまうのです。
内的批判者は、心を守るために「失敗しないように注意しろ」と警告しているつもりですが、その声が強すぎると、かえって自分を苦しめる存在になってしまいます。
育ちや家庭環境の影響とは
「自分を責める癖」の大きな原因のひとつが、育ちや家庭環境です。
特に、
- 厳しい親に育てられた
- 失敗を許されない家庭環境だった
- 小さい頃から「もっと頑張れ」と言われ続けた
- 褒められるより叱られることが多かった
こういった環境で育つと、「自分はまだ足りない」「もっと努力しないと愛されない」という思い込みが心に染みついてしまいます。
例えば、親から「100点以外はダメ」と言われてきた人は、大人になっても「完璧じゃない自分はダメだ」と自分を責め続けやすいのです。
フロイトの超自我と自己批判
精神分析の創始者フロイトは、人の心を3つの領域に分けました。
- エス(本能的欲求)
- 自我(現実と折り合いをつける部分)
- 超自我(良心・道徳心)
この「超自我」が厳しすぎると、自分の欲求や失敗を許せず、自分を厳しく責め立てます。
例えば、
- 「ちゃんとしなきゃ」
- 「周りに迷惑をかけてはいけない」
- 「人に認められなければ価値がない」
といった思いは、超自我の過剰な働きから来ることが多いです。
つまり、超自我は本来、社会でうまく生きるために大切な心の機能ですが、強すぎると自己批判や自己否定の原因になってしまうのです。
認知行動療法が注目する「自動思考」
心理療法のひとつ、認知行動療法(CBT)では、自分を責める癖は「自動思考」と呼ばれる心のクセが原因だと説明します。
「自動思考」とは、出来事が起きたときに、ほとんど無意識に浮かぶ考えのことです。
例えば、
- ミスをした → 「私は役立たずだ」
- 人に断られた → 「嫌われたに違いない」
という具合に、瞬間的にネガティブな結論を出してしまうのが「自動思考」です。
この自動思考を放っておくと、ますます自分を責める癖が強まります。
CBTでは、
- ネガティブな考えに気づく
- その考えが本当に正しいか検証する
- もっと現実的で優しい考え方に置き換える
というステップで、少しずつ思考のクセを修正していきます。

自分に厳しい人の育ちと特徴

「自分に厳しい人」は、一見すると努力家で真面目に見えますが、その裏には自分を責め続ける苦しさを抱えていることが多いです。ここでは、育ちや性格面からその特徴を詳しく見ていきましょう。
厳しい親に育てられた人の傾向
厳しい親のもとで育った人は、子どもの頃から常に「もっと頑張れ」と求められがちです。
例えば、
- テストで90点を取っても「あと10点取れたはず」と言われる
- ミスを厳しく叱られる
- 褒められるより叱られることが多い
こうした経験を繰り返すと、
- 完璧でいないと価値がない
- 失敗すると見捨てられる
という思い込みが心に根づきます。
この「条件付きの愛情」に慣れてしまうと、大人になっても自分を追い詰めるようになります。「できて当然」「まだ足りない」と自分を責める声が強くなるのです。
完璧主義や自己評価の低さとの関係
完璧主義は、自分に厳しい人によく見られる特徴です。
- 少しのミスも許せない
- 常に最高の成果を求める
- 周りの評価を過剰に気にする
一方で、心の中では自己評価が低いことも多いです。
たとえば、
- 「他の人はもっとできているのに自分はダメだ」
- 「ちょっとした失敗で全否定される気がする」
という具合に、自分に対する評価がとても厳しく、ネガティブになりやすいのです。
完璧を目指すこと自体は悪いことではありませんが、常に100点を求めると心が疲れ果ててしまいます。
自己批判型うつとの関連性
心理学では、「自己批判型うつ」という概念があります。これは、自分を責める思考が強い人が、うつ病を発症しやすい傾向を示した研究です。
心理学者のシドニー・ブロック(Sidney Blatt)が提唱した理論では、
- 自分の欠点や失敗に過度に注目する
- 自分を責め続けてしまう
- 達成しても心から喜べない
こうした傾向が、抑うつを引き起こしやすいとされています。
つまり、自分に厳しすぎる性格は、心の健康を大きく脅かすリスクを持っているのです。
自分を責める人の共通する思考パターン
自分を責める人には、いくつかの共通する考え方のクセがあります。
たとえば、
- 白黒思考(オールオアナッシング思考)
「完璧じゃないなら全部ダメ」と極端に考える - 過剰な一般化
「一度失敗した=自分は一生ダメだ」と決めつける - 心の読みすぎ
「きっと嫌われたに違いない」と証拠もなく思い込む - 自己関連付け
物事がうまくいかないとすぐ「自分のせい」と感じる
こうした思考パターンは、自動思考とも深く関係しています。
自分を責める癖がある人は、これらの考えが無意識のうちに頭に浮かび、心を苦しめてしまうのです。
自分を責める癖を直すための具体的な方法

「自分を責める癖」は、生まれつきの性格ではなく、考え方や習慣の積み重ねによって強まっていくものです。つまり、意識して取り組めば必ず直すことができます。ここでは、取り組みやすい具体的な方法を紹介します。
セルフ・コンパッション(自分への思いやり)の実践
最近、心理学の分野で注目されているのがセルフ・コンパッション(self-compassion)です。これは、「自分に優しくする力」のこと。
例えば友達が失敗して落ち込んでいるとき、多くの人は
- 「そんなに気にしなくて大丈夫だよ」
- 「あなたは頑張ってるよ!」
と声をかけるはずです。
セルフ・コンパッションとは、その優しさを「自分自身にも向ける」ことです。
簡単な練習方法としては、
- 自分を責める言葉に気づく
例:「また失敗した。私はダメだ。」 - 友達に言うように、優しい言葉を自分にかける
例:「失敗しても大丈夫。誰だってミスするよ。」
この小さな習慣だけでも、心の負担が大きく軽くなります。
考え方を書き換える認知行動療法のコツ
「認知行動療法(CBT)」は、自分を責める癖を直すうえで非常に有効です。
CBTでよく使うのは「思考の記録」という方法です。簡単に言うと、浮かんだネガティブな考えを紙に書き出し、それを見直す練習です。
やり方は次の通りです。
- 出来事を書く
例:「上司に注意された」 - そのとき浮かんだ考えを書く
例:「私はダメな人間だ」 - その考えが本当に正しいか、別の見方を探す
例:「注意されたけど、それは仕事を良くするため。私が完全にダメなわけじゃない。」
こうすることで、自分を責める自動思考にストップをかけやすくなります。
「自分に優しくする習慣」の作り方
自分を責めないためには、普段から自分に優しくする習慣を持つことが大切です。
以下のような小さなことから始めてみましょう。
- 疲れているときは無理をせず休む
- 頑張った自分を声に出して褒める
- 小さな成功を「よくやった」と認める
- 自分のために好きなことをする(散歩、カフェタイム、趣味など)
こうした習慣が少しずつ心を柔らかくし、「責める声」に打ち勝つ力が高まります。
深刻な場合は専門家に相談を
もし、
- 毎日のように自分を責めて辛い
- 気分が落ち込みすぎて何も手につかない
- 生きているのがつらい
という状態であれば、専門家に相談することを強くおすすめします。
- 臨床心理士や公認心理師によるカウンセリング
- 心療内科・精神科の受診
こうした専門家は、「自分を責める癖」を改善するための具体的なサポートや治療を行っています。
決して「弱いから相談する」のではありません。一人で抱え込まず、助けを借りることはとても大事な一歩です。
自分を責める癖を直すことは簡単ではありませんが、決して不可能ではありません。少しずつ取り組むことで、心が驚くほど楽になっていきますよ。
まとめ|自分を責める癖と向き合うために大切なこと

ここまで、自分を責める癖の原因や、自分に厳しい人の特徴、そして具体的な直し方を紹介してきました。最後に、これからの一歩のために大切なポイントをまとめます。
「自分はダメ」から抜け出すためのヒント
「自分はダメだ」という思い込みは、あくまで心が作り出した思考のクセです。
抜け出すヒントは、
- 「自分はダメ」と決めつけず、事実と感情を分けて考える
- 過去の失敗を引きずらず、「今」できることに目を向ける
- 小さな成功や良い面を意識して探す
例えば、「あのとき失敗した」という記憶が浮かんでも、
- 「失敗したけど、それが自分の全てじゃない」
- 「失敗から学んだこともある」
と別の角度から見直すことが大切です。
悩んでいる自分を責めないことが第一歩
「自分を責める癖がある」と気づけたことは、実はとても大きな一歩です。
しかし多くの人は、
- 「こんなことで悩んでいる自分は弱い」
- 「また責めてしまった、自分はダメだ」
と、さらに自分を責めてしまいがちです。
でも、それは責める必要のないことです。悩むのはそれだけ一生懸命生きている証拠だからです。
次のように、少し声をかけてあげてください。
- 「今はしんどいけど、それでもよく頑張っているね」
- 「また責めちゃったけど、それに気づけたのは偉い」
このような言葉が、自分を責める癖を少しずつゆるめるきっかけになります。
これからできる小さな一歩
自分を責める癖を直すには、いきなり完璧を目指さないことがとても大事です。小さな一歩を積み重ねることが、必ず心を変えていきます。
たとえば、今日からできることは、
- 「責める言葉」に気づいたら、一度深呼吸をする
- 一日の終わりに「よくやったこと」を3つ書き出す
- 自分に優しい言葉をかけてみる
- 時には人に悩みを話してみる
こうした小さな行動が、少しずつ自分を責めない習慣を作ってくれます。
「自分を責める癖」は、時間をかけて作られてきた心のクセです。だからこそ、焦らずに、少しずつ向き合っていきましょう。
そして何より、
「自分を大事にしていい」
ということを、忘れないでください。