「やらなきゃいけないのに、つい後回しにしてしまう…」 そんな経験、ありませんか？
- 勉強や仕事が気づけばギリギリになる
- ダイエットや習慣づくりが三日坊主で終わる
- やる気が出なくて自己嫌悪に陥る
実はこれは、心理学で説明できる先延ばしのメカニズムなんです。カナダの心理学者ピアーズ・スティールが提唱した 「先延ばし方程式」 を知れば、なぜ行動できないのか、どう工夫すれば動けるのかが見えてきます。
この記事では、
- 方程式の基本（期待・価値・衝動性・遅延の4要素）
- 人が先延ばしする心理的な背景
- 日常やビジネスで役立つ実践的な対策
をわかりやすく解説していきます。先延ばし癖に悩む方にとってヒントになるはずです。ぜひ最後まで読んでくださいね！
スティールの先延ばし方程式とは？基本の考え方をわかりやすく解説
私たちが「やらなきゃ」と思いつつも、ついスマホを見たり、ゲームやお菓子に手を伸ばしてしまうのはなぜでしょうか？
この疑問に答えるのが、スティールの先延ばし方程式（Steel’s Procrastination Equation）です。
先延ばし方程式の数式と意味（期待×価値 ÷ 衝動性×遅延）
心理学者ピアーズ・スティールは、人が「行動をする／しない」を決めるモチベーションを、次の式で表しました。
- 期待（Expectancy）：その行動を成功できそうだと思えるか
- 価値（Value）：その行動や成果にどれだけ意味やご褒美を感じるか
- 衝動性（Impulsiveness）：気が散りやすさや、目先の誘惑に弱い度合い
- 遅延（Delay）：成果や報酬を得るまでにかかる時間
つまり、やる気は「期待」と「価値」で強まり、「衝動性」と「遅延」で弱まるというシンプルな構造です。
「期待」「価値」「衝動性」「遅延」それぞれの意味
分かりやすく整理すると、次のようになります。
- 期待：「これなら自分でもできそう」と思えるかどうか
- 価値：「やったらご褒美がある／意味がある」と思えるかどうか
- 衝動性：「つい他のことに気を取られてしまう」傾向の強さ
- 遅延：「成果が出るのが遠い」と感じるほど、やる気が落ちやすい
モチベーションが上下する仕組みを例で理解する
例えば、テスト勉強をイメージしてみましょう。
- 合格できそう（期待↑）＋合格すれば嬉しい（価値↑）
→ やる気が高まる - でも、試験は2週間後（遅延↑）＋スマホ通知が気になる（衝動性↑）
→ 先延ばしにつながる
同じように、ダイエットでも…
- 痩せたい（価値↑）けれど、成果は数か月後（遅延↑）＋目の前のケーキが魅力的（衝動性↑）
→ 続かない原因になる
なぜ人は先延ばししてしまうのか｜心理学的な背景
「やらなきゃいけないのに手が動かない…」という経験は、誰にでもあると思います。
これは心理学的なメカニズムで説明できます。
先延ばしは心理のクセ
多くの人が「先延ばし＝怠け癖」と考えがちですが、実際は脳の働きによる自然な反応です。
例えば、私たちは「嫌なこと」よりも「楽しいこと」に注意が向きやすいようにできています。
- 苦手な作業 → 不快感を避けたい気持ちが強まる
- 目の前の娯楽 → すぐに快楽が得られる
このギャップが「後でやろう」という判断につながりやすいのです。
双曲割引との関係（短期的な快楽を優先してしまう心理）
行動経済学では「双曲割引（Hyperbolic Discounting）」という考え方があります。
これは、未来の大きな報酬よりも、今すぐの小さな報酬を優先してしまう心理のことです。
例：
- 「今お菓子を食べる」 vs 「半年後にダイエット成功」 → ついお菓子を選んでしまう
- 「今スマホを見る」 vs 「一週間後に試験で合格する」 → スマホに手が伸びてしまう
人間は未来の価値を低く見積もるクセがあるため、どうしても先延ばしが起きやすいのです。
自己制御や意志力との関連
心理学者ロイ・バウマイスターは、意志力（Willpower）は筋肉のように使えば疲れるが、鍛えれば強くなると提唱しました。
つまり、
- 連続して誘惑に耐えると、意志力は消耗する
- しかし少しずつ訓練すれば、誘惑に強くなっていく
「先延ばしに勝てない」のは、自分の弱さではなく、脳のエネルギーの使い方の問題でもあるのです。
研究と歴史｜スティールの方程式が生まれた背景
スティールの先延ばし方程式は、偶然の思いつきではなく、長年の研究とデータの積み重ねから導かれました。ここでは、その成り立ちを振り返ってみましょう。
ピアーズ・スティールとは？研究者のプロフィール
ピアーズ・スティール（Piers Steel）は、カナダ・カルガリー大学の心理学者です。
彼自身も「先延ばし癖」に悩んでいた経験を持ち、その原因を科学的に解明しようと研究に取り組みました。
その結果、世界的に注目される先延ばし研究の第一人者となり、著書『The Procrastination Equation（邦題：ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか）』を発表しています。
2007年のメタ分析で導かれた数式モデル
スティールは2007年、先延ばしに関する数百件以上の研究をまとめた「メタ分析」を実施しました。
その膨大なデータを統計的に整理する中で、先延ばし行動を左右する主な要素が「期待」「価値」「衝動性」「遅延」の4つに整理できることを突き止めました。
この結果を数式化したものが、スティールの先延ばし方程式です。
先延ばし研究の中でこの方程式が評価された理由
従来の研究では、先延ばしの原因を「性格」「怠け」「時間管理の下手さ」といった抽象的な説明で片付けることが多くありました。
しかしスティールの方程式は、行動を数式で説明できるシンプルさと再現性を持っていたため、一躍有名になりました。
- 数式なので客観的に測定できる
- 要因ごとに改善策を考えやすい
- 心理学だけでなく、教育・ビジネスでも応用できる
この点が評価され、心理学だけでなく行動経済学や実践的な自己管理法にも広く取り入れられるようになったのです。
スティールの方程式から分かる先延ばしの4つの要因
スティールの先延ばし方程式では、「期待」「価値」「衝動性」「遅延」という4つの要素が先延ばしを左右すると説明されています。ここでは、それぞれの意味と具体例を見ていきましょう。
期待（できそうだと思えるかどうか）
- 期待（Expectancy）とは、「自分なら成功できそう」と感じる見込みのこと。
- 例：試験勉強で「この範囲は得意だから点が取れそう」と思えば勉強に取り組みやすい。
- 逆に「どうせ無理」と思うと、やる気が下がり先延ばしが強まる。
👉 小さな成功体験を積むことが、期待を高めるカギになります。
価値（やる意味やご褒美の大きさ）
- 価値（Value）とは、その行動の「やる意味」や「達成後のご褒美」のこと。
- 例：仕事なら「昇進につながる」、勉強なら「将来の夢に近づける」といった価値があると頑張れる。
- 価値を感じられないタスクほど、後回しにしやすい。
👉 自分にとっての意味づけを強める工夫が効果的です。
衝動性（目先の誘惑に流されやすさ）
- 衝動性（Impulsiveness）とは、「今この瞬間の誘惑に弱い度合い」。
- 例：スマホ通知、SNS、ゲーム、お菓子など。
- 衝動性が高い人ほど、タスクより誘惑を優先してしまいがち。
👉 環境を整えて誘惑を減らすことが先延ばし対策になります。
遅延（報酬までの距離の長さ）
- 遅延（Delay）とは、「成果や報酬が手に入るまでの時間」。
- 報酬が遠いと「今やらなくてもいい」と思ってしまう。
- 例：ダイエットは数か月後に結果が出るため、先延ばしが起きやすい。
👉 短期目標を設定し、近いご褒美をつくることで克服できます。
まとめると、
- 期待と価値が高ければやる気は増える
- 衝動性と遅延が大きければ先延ばしが強まる
というシンプルな構造です。
これを理解するだけで、「なぜ自分はやらないのか」が数字のように見えるようになります。
あなたはどのタイプ？先延ばし3タイプ診断
スティールは「先延ばしをしやすい傾向」を3つのキャラクターで説明しています。自分がどのタイプに当てはまるか考えてみましょう。
- エディー型（Eddy the Expectancy）
- 特徴：自信がなく「どうせ失敗する」と思ってしまうタイプ
- 方程式の要因：期待（Expectancy）が低い
- 例：「やっても上手くいかないだろう」と勉強や仕事を避ける
- → 対策：小さな成功体験を積み重ねて「できる感覚」を育てる。
- バレリー型（Valerie the Value）
- 特徴：課題自体に楽しさや意味を感じられないタイプ
- 方程式の要因：価値（Value）が低い
- 例：「やる意味ある？」「つまらない」と思ってやる気が出ない
- → 対策：ご褒美を設定したり、自分にとっての価値を再発見する。
- トム型（Tim the Impulsiveness）
- 特徴：目の前の誘惑に負けやすいタイプ
- 方程式の要因：衝動性（Impulsiveness）が高い
- 例：勉強中でもスマホやゲームに気を取られる
- → 対策：スマホを遠ざけるなど、誘惑を減らす環境づくりを行う。
先延ばし方程式を活用した実践的な対策
スティールの先延ばし方程式の強みは、「原因ごとに具体的な対策を考えられる」点です。
ここでは、期待・価値・衝動性・遅延の4つをどう工夫すれば良いかを解説します。
期待を高める｜小さな成功体験を積む
- 大きな課題をいきなりやろうとすると「無理そう」と感じて期待が下がりやすい。
- 例：レポートなら「まずはタイトルだけ書く」、勉強なら「5分だけ問題集を開く」。
- 小さな一歩で「できた！」という感覚を積み重ねると、期待値が上がり行動が続きやすくなる。
価値を高める｜ご褒美や意味づけを工夫する
- 価値が低いと感じる作業は、後回しの大きな原因。
- 例：勉強なら「未来のキャリアに役立つ」、仕事なら「チームに貢献できる」と意味を再確認する。
- さらに「やった後にコーヒーを飲む」「終わったら好きな動画を見る」など、小さなご褒美を設定するのも効果的。
衝動性を下げる｜スマホ通知オフや環境づくり
- 衝動性は「意志力」よりも「環境」でコントロールしやすい。
- 具体例：
- スマホ通知を切る／別の部屋に置く
- 作業環境をシンプルにする
- 勉強用アプリやポモドーロタイマーを使う
- 「見ない・触らない仕組み」を作ることで、誘惑に勝ちやすくなる。
遅延を短縮する｜短期目標や締め切りの設定
- 報酬が遠いとやる気が出にくいため、小さな期限や短期ゴールを作る。
- 例：資格勉強なら「今日は10ページ読む」、ダイエットなら「1週間で1回外食を減らす」。
- 成果を「小分け」にして可視化すると、達成感が早く得られる。
日常やビジネスでの応用例
スティールの先延ばし方程式は、学術的な理論にとどまらず、日常生活やビジネスの現場でもすぐに応用できます。ここでは、具体的なシーン別に活用例を紹介します。
勉強・試験勉強に応用する方法
- 期待を高める：最初から全部覚えようとせず、「今日は10問だけ解く」と小さく区切る。
- 価値を高める：合格後の進路や夢を思い描いて「やる意味」を意識する。
- 衝動性を下げる：スマホを机から離し、勉強アプリや図書館を利用する。
- 遅延を短縮する：模擬テストや小テストを定期的に受けて、短期的な成果を実感する。
ダイエットや健康習慣での使い方
- 期待を高める：いきなり10kg減ではなく、「1週間で1kg減」など現実的な目標を設定する。
- 価値を高める：健康診断の改善やお気に入りの服を着る自分をイメージする。
- 衝動性を下げる：お菓子を買わない／冷蔵庫に置かない環境をつくる。
- 遅延を短縮する：毎日体重を記録して「小さな変化」を確認できるようにする。
仕事やタスク管理での具体的応用
- 期待を高める：難しい企画書なら「タイトルだけ」「見出しだけ」など最初のハードルを下げる。
- 価値を高める：仕事の成果がチームや顧客にどう役立つかを意識する。
- 衝動性を下げる：作業時間は通知をオフにし、集中タイムを決める。
- 遅延を短縮する：週次レビューや進捗共有ミーティングで「小さな締め切り」を作る。
まとめ｜スティールの先延ばし方程式で「やる気の仕組み」を理解しよう
ここまで見てきたように、スティールの先延ばし方程式は「なぜ先延ばししてしまうのか」を分かりやすく整理できる便利なツールです。最後にポイントを振り返りましょう。
先延ばしは心理のメカニズムで説明できる
- 先延ばしは心理的なクセとして理解できる。
- 双曲割引（未来の価値を低く見積もる傾向）や意志力の消耗といった研究からも裏付けられている。
期待・価値を上げ、衝動性・遅延を下げるのがポイント
- 期待を上げる：小さな成功体験で「できそう」と思えるようにする。
- 価値を上げる：ご褒美や意味づけを工夫する。
- 衝動性を下げる：環境を整えて誘惑を遠ざける。
- 遅延を下げる：短期目標や小さな締め切りを設定する。
理論を日常に取り入れることで行動しやすくなる
- 勉強、ダイエット、仕事など、先延ばしは誰にでも起きる普遍的な問題。
- 方程式をヒントに、自分に合った行動の仕組みを作ることで「やらなきゃ」を「できた！」に変えられる。
💡 まとめると、スティールの先延ばし方程式は「やる気の仕組み」を解明した心理学モデルであり、日常の行動改善に役立つ実践的な知識です。
小さな工夫から始めることで、先延ばし癖は必ず軽減できます。
