「憧れの人みたいになりたい」と思ったことはありませんか?
でも一方で、「自分らしさを失っている気がする」「現実から逃げているだけかも」とモヤモヤすることもあるはずです。
心理学ではこうした心の働きを「同一化」と呼び、防衛機制(心を守る仕組み)のひとつとして説明されています。
同一化はうまく使えば成長のきっかけになりますが、行きすぎると現実逃避や自己否定につながることも…。
この記事では、
- 同一化の基本的な意味と役割
- 現実逃避との違い
- 子ども・職場・推し活など身近な具体例
- 健全に活用するコツ
を初心者でも分かりやすく解説します。
「同一化」を理解すると、憧れを前向きな力に変えるヒントが見えてきますよ。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
防衛機制の同一化とは?初心者向けの基本解説
同一化の定義|心理学での意味をやさしく説明
同一化(identification)とは、心理学で「自分が大切だと思う人や憧れの存在の特徴を、自分の中に取り込む心の働き」を指します。
たとえば、子どもが「お父さんみたいに強くなりたい」と思って真似をする、学生が「尊敬する先生の口癖を自然に使ってしまう」といった行動です。
これは単なる真似(モノマネ)ではなく、無意識のうちに相手の価値観や特徴を自分に重ねるという点が特徴です。
防衛機制としての同一化の役割
同一化は、心理学でいう防衛機制のひとつに位置づけられています。
防衛機制とは、人が不安や葛藤に押しつぶされそうなときに心を守る自動的な仕組みのことです。
- 自信がないときに「憧れの人と同じ自分だ」と感じることで安心できる
- コンプレックスを和らげるために、強い人や魅力的な人と同一化する
このように、同一化は不安をやわらげ、自己肯定感を支える役割を果たしています。
同一視との違い|混同されやすい用語の整理
似た言葉に「同一視」があります。混同されやすいですが、心理学的には少し違います。
- 同一化:相手の特徴を取り込み、自分の中に重ねる(無意識のプロセス)
- 同一視:相手と「自分は同じだ」と感じ、境界があいまいになる(自己と他者の混同)
👉 たとえば、憧れの歌手に同一化して「自分も歌が上手くなりたい」と努力するのは同一化ですが、
「自分はあの歌手と同じ存在だ」と思い込んでしまうのは同一視に近いイメージです。
📌 まとめると、同一化は 「不安や願望に対応するために、自分が重要だと思う他者の特徴を取り入れて自分を守る心の働き」 であり、防衛機制として心を守りながら成長のきっかけにもなる心理的仕組みです。
同一化と現実逃避の違いを心理学的に理解する

ポジティブな同一化とネガティブな同一化
同一化(identification)は「憧れの人の特徴を自分に取り入れる心の働き」です。これは成長につながるポジティブな面もあれば、逆に不健全に働くネガティブな面もあります。
- ✅ ポジティブな同一化:憧れや尊敬を原動力にし、自分を成長させる。
例:新人が尊敬する先輩の仕事ぶりを真似してスキルを伸ばす。 - ⚠️ ネガティブな同一化:相手に同一化しすぎて自分らしさを失ったり、現実から目をそらす。
例:強い人に同一化して弱者を攻撃したり、推しと比べて自分を否定してしまう。
👉 同一化は「良いか悪いか」ではなく、どう使うかによって自己成長にも現実逃避にもなり得る防衛機制なのです。
現実逃避は問題解決を先送りする心の働き
一方で、現実逃避(escape)は、防衛機制のひとつとして「向き合うべき課題から一時的に逃げる心の働き」を意味します。
- 例:試験勉強の不安からゲームやSNSに没頭する
- 例:人間関係の悩みを考えたくなくて眠り続ける
現実逃避は一時的に心を軽くしますが、問題そのものは解決せず、むしろ後回しになるのが特徴です。
👉 同一化が「憧れを力に変える」可能性を持つのに対し、現実逃避は「現実から目を背ける」点で大きく異なります。
推し活は「同一化」と「現実逃避」の両方の側面を持つ
最近注目される「推し活」も、この視点で整理できます。
- 同一化の側面:推しに憧れて「自分も努力しよう」と前向きになれる
- 現実逃避の側面:推しの世界に没頭しすぎて、日常の問題から目をそらしてしまう
つまり推し活は「健全な同一化」にも「危険な現実逃避」にもなり得る活動です。大切なのは、推しを通じて自分の生活や成長につなげられるかどうかという視点です。
📌 まとめると、
- 同一化 → 成長や自己理解につながる可能性あり
- 現実逃避 → 問題を先送りし、自己喪失につながる危険あり
- 推し活 → そのどちらにも転ぶ
👉 この違いを理解することで、自分の「憧れ」が健全なのか、それとも逃避に偏っているのかを見極めやすくなります。
同一化の具体例|日常生活でよくあるパターン

子どもが親や先生を真似する同一化
子どもは成長の過程で、身近な大人をモデルにして学びます。
たとえば、男の子が「お父さんみたいに強くなりたい」と思って仕草を真似したり、女の子が「先生みたいに優しくなりたい」と思って行動するのは、同一化の典型例です。
👉 子どもにとって同一化は、社会のルールや役割を理解する大切なステップであり、人格形成の基盤になります。
職場で先輩や上司に同一化するケース
社会人になると、職場の先輩や上司が同一化の対象になることがあります。
「この先輩みたいに丁寧に仕事をしたい」「上司のように堂々と話せるようになりたい」と思うことで、スキルや自信を磨くきっかけになります。
ただし、過剰に同一化すると「自分らしさ」を失い、他人に依存するような働き方になる危険もあります。
👉 大事なのは「良いところを取り入れながら、自分のスタイルに合わせていく」ことです。
推し活・アイドルに憧れて努力につなげる同一化
現代的な例としてわかりやすいのが「推し活」です。
アイドルや俳優、アーティストに憧れて「推しみたいに頑張りたい」と思うことは、ポジティブな同一化の表れです。
- 推しが努力している姿を見て、自分も勉強や仕事を頑張れる
- 推しの言葉に励まされて、自分を大切にする気持ちが生まれる
このように、推し活はモチベーションの源泉にもなります。
一方で、自分の現実を見られずに推しの人生にのめり込みすぎると、現実から逃げたり、自分を否定してしまうことにつながります。だからこそ、適度な距離感を保つことが大切です。
同一化に気づき、うまく活用するためのヒント

「誰を真似しているか」に気づくことの大切さ
同一化は無意識に働くことが多いため、まずは「自分が誰を真似しているか」に気づくことが第一歩です。
- 仕事で口調やしぐさが似てきた人は誰か?
- 自分が自然と尊敬している人は誰か?
👉 こうした気づきは、単なる真似を超えて「自分が求めているもの」を知る手がかりになります。
ポジティブな同一化を成長に活かす方法
同一化を成長につなげるには、「尊敬できる部分を取り入れ、自分なりに活かす」ことが大切です。
- 憧れの人の行動を観察してみる
- その中から自分に合う部分を少しずつ試す
- 完全に真似るのではなく、自分のスタイルにアレンジする
👉 たとえば「先輩の整理術がすごい」と思ったら、そのままコピーするのではなく、自分の生活に合う方法で取り入れると長続きします。
現実逃避に偏らないための注意点
同一化はプラスに働く一方で、現実逃避にすり替わるリスクもあります。
- 「推しと同じでなければ価値がない」と思い込む
- 強い人に同一化して弱者を見下す
- 自分の問題から目をそらすためだけに憧れを利用する
こうした状態に陥ると、同一化は成長ではなく自己喪失や孤立につながります。
📌 まとめると、同一化に気づくことは自己理解につながり、ポジティブに活かせば成長の力になります。
ただし「逃げ」や「過剰な依存」に偏らないように意識することが、健全な同一化を保つカギです。
まとめ|同一化を理解すると自己成長につながる
心理学を学ぶことで自分を客観視できる
同一化は無意識に働くため、自分では気づきにくいです。
しかし心理学を通して「これは同一化かもしれない」と理解できると、自分の心のクセを客観的にとらえる力が身につきます。
👉 結果として、感情に振り回されず冷静に行動できるようになります。
憧れを成長に変えるための考え方
同一化そのものは悪いものではありません。
むしろ、憧れや尊敬をモチベーションに変える力を持っています。
ただし「自分らしさを失わない」「現実から逃げない」ことが前提です。
- 良い部分を少しずつ取り入れる
- 自分の生活や価値観に合う形で実践する
- 完全に同じになる必要はないと理解する
👉 これが「健全な同一化」を保つコツです。
現実逃避ではなく健全な同一化を選ぶコツ
現実逃避と同一化は似ているようで大きく異なります。
- 現実逃避は問題から目を背けるだけ
- 健全な同一化は不安をやわらげつつ、成長の力に変えられる
👉 同じ「憧れ」でも、行動や努力につながれば健全な同一化、問題を先送りするだけなら現実逃避です。
