「なんで自分は同じことでモヤモヤするんだろう?」
「はっきりした記憶はないけど、なぜか心がざわつく…」
そんな経験はありませんか?
それは防衛機制という心の仕組みのひとつ、抑圧(つらい感情や記憶を無意識に押し込めること)が関わっているかもしれません。
この記事では、
- 防衛機制と抑圧の基本的な意味
- 日常生活での具体例(幼少期・職場・恋愛など)
- 抑圧が心や体に与える影響
- 抑圧に気づいたときの対処法
を初心者にもわかりやすく解説します。
読めば「自分の心のクセ」に気づき、ストレスや人間関係をよりスムーズにするヒントが得られるはずです。ぜひ最後まで読んでくださいね!
防衛機制とは?初心者でもわかる基本の意味
防衛機制の定義と心を守る役割
「防衛機制(ぼうえいきせい)」とは、心が強いストレスや不安に押しつぶされないようにするための無意識の心理的な仕組みのことです。
たとえば、嫌なことを一時的に忘れたり、怒りを別のことに置き換えたりして、心のバランスを保とうとします。
言い換えると、防衛機制は「心の安全装置」。
自転車に例えると、転びそうになったときに体が勝手にバランスを取ろうとするように、心も無意識に「転ばないように」自分を守っているのです。

フロイトによる防衛機制の理論
この考え方を最初に提唱したのは、精神分析の創始者であるジークムント・フロイトです。
フロイトは、人間の心を「無意識」「前意識」「意識」という層でとらえました。
その中で、受け入れがたい欲望や感情が無意識にたまり、意識にあふれ出すのを防ぐ仕組みこそが防衛機制だと説明しました。
後にフロイトの娘であるアンナ・フロイトが、この理論をさらに整理し、「抑圧」「否認」「投影」など具体的な防衛のパターンを体系化しました。
抑圧が防衛機制の中心とされる理由
数ある防衛機制の中でも、「抑圧」は最も基本的で重要だとされています。
理由はシンプルで、他の防衛機制(否認や投影など)は、すべて「抑圧」が起こっていることを前提にして働くからです。
つまり「心にしまい込む(抑圧する)」ことが先にあって、その上で「なかったことにする(否認)」や「相手のせいにする(投影)」といった反応が出てくる、というイメージです。
防衛機制は一見ネガティブな響きがありますが、実は誰もが日常的に使っている心の工夫です。
ただし、強く働きすぎると問題が表面化することもあるため、理解しておくことがとても大切です。
抑圧とは?心理学での意味と日常的なイメージ

抑圧の定義|「無意識に押し込める」という特徴
抑圧(よくあつ)とは、防衛機制の中でも中心的な仕組みで、自分にとってつらい感情や記憶を無意識の中に押し込め、意識しないようにする働きのことを指します。
たとえば、幼少期の怖い体験や、受け入れがたい失敗を「思い出せない」状態になるのは、抑圧の典型例です。
ポイントは「忘れよう」と意識的に努力しているのではなく、無意識のうちに心が勝手に“見えない場所”にしまい込んでしまうという点です。
忘れることや我慢との違い
抑圧と混同されやすいのが「忘れる」や「我慢」です。
- 忘れる:時間の経過とともに自然に記憶が薄れていくこと(例:数年前の夕食のメニューを覚えていない)。
- 我慢する:意識的に「怒らないようにしよう」と思って感情を抑えること。
- 抑圧:意識にのぼることすらなく、無意識に押し込めてしまうこと。
つまり抑圧は「心の奥深くに自動で隠される」仕組みであり、本人が自覚できない分だけ厄介ともいえます。
抑圧が起きる仕組みを氷山モデルで説明
心理学ではよく「氷山モデル」で説明されます。
- 水面上の部分(意識):今自分が考えていることや感じていること
- 水面下の部分(無意識):普段は意識していない欲求・感情・記憶
抑圧された内容は、この水面下に沈んで隠れます。表には見えませんが、完全に消えるわけではなく、夢・言い間違い・身体反応(動悸・不安など)として表れることがあります。
言い換えれば、抑圧は「見えないけれど存在している荷物」を心の奥底にしまい込んでいる状態です。
防衛機制「抑圧」の具体例|日常生活でのケース

幼少期のトラウマを抑圧する例
幼少期に経験した怖い出来事やつらい記憶は、心を守るために抑圧されることがあります。
たとえば、子どもの頃に親から厳しく叱られた体験を覚えていなくても、大人になってから「権威的な人に会うと緊張する」という形で反応が残ることがあります。
このように、意識では忘れているのに、無意識下で影響が続いているのが抑圧の特徴です。
怒りや不安を抑圧する職場での事例
職場では、上司や同僚に対して怒りや不安を表に出せない場面があります。
「言い返したいけど立場上できない」「不安だけど弱みを見せられない」といった状況では、その感情を無意識に押し込めてしまうことがあります。
しかし、抑圧された怒りや不安は消えるわけではなく、不眠・胃痛・イライラといった身体的・心理的症状として表れることも多いです。
恋愛や人間関係で感情を抑圧する例
恋愛や親しい人間関係の中でも、本音を言えないときに抑圧が働きます。
たとえば、
- 相手に嫌われたくなくて「寂しい」「不満だ」と言えずに心の奥にしまい込むが、後から急にイライラしたり、相手に冷たい態度を取ってしまう
- 失恋のつらさを抑圧して「大丈夫」と思い込むが、後から虚しさや不安が強くなる
このように、表面的には平気に見えても、抑圧された感情が別の形で影響するのです。
抑圧が心と体に与える影響

不安やストレスとして表れるパターン
抑圧は一時的に心を守りますが、感情や記憶は完全に消えるわけではありません。
そのため、無意識に押し込められた感情が「不安」や「慢性的なストレス」として表面化することがあります。
たとえば、理由もなく落ち着かない、緊張が続く、夜に考え事が止まらないといった症状は、抑圧された感情が心の奥で影響しているサインかもしれません。
神経症や心身症に関連するケース
長期間にわたって抑圧が続くと、神経症(不安障害・抑うつなど)や心身症(胃潰瘍・頭痛・不眠など)につながることがあります。
心は感情を抑えても、体はその負担を引き受けてしまうため、「心では平気」でも「体がSOSを出している」状態になるのです。
PTSDやフラッシュバックとの関わり
特にトラウマ体験では、抑圧された記憶が断片的な夢やフラッシュバックとして突然よみがえることがあります。
これは、心が処理しきれずに押し込めた記憶が、何かのきっかけで刺激されて意識に浮かび上がるためです。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状としても、抑圧は大きな役割を果たしていると考えられています。
💡まとめると、抑圧の影響は次のように現れます:
- 軽度:理由のない不安やストレス
- 中度:心身症(不眠・頭痛・胃の不調)
- 重度:神経症やPTSDの症状
抑圧は心を守る「盾」ですが、行きすぎると心身に重い負担をかける両刃の剣なのです。
抑圧と他の心理学概念の違い
抑圧と否認・投影の違い
防衛機制には「抑圧」以外にもいくつかの種類があります。特に混同されやすいのが否認と投影です。
- 抑圧:つらい記憶や感情を無意識に押し込めて、意識にのぼらせない。
例:幼少期の虐待を覚えていないが、大人になっても人間関係で強い不安を感じる。 - 否認:起きた現実を受け入れず、「なかったこと」にする。
例:大きな失敗をしたのに「そんなことは起きていない」と思い込む。 - 投影:自分の中の受け入れがたい感情を他人に移して考える。
例:自分が怒っているのに「相手が怒っている」と感じる。
👉 抑圧は「内に隠す」、否認は「事実を拒否する」、投影は「他人に映す」と覚えると整理しやすいです。
抑圧と認知の歪みとの関係
認知の歪みとは、物事の受け止め方が偏ってしまう思考パターンのことです。
例えば「白か黒かでしか考えられない(白黒思考)」「自分ばかりが悪いと考える(自己関連付け)」などが代表例です。
抑圧と認知の歪みは異なる概念ですが、関係があります。
抑圧とは、本来の感情を無意識に心の奥へ押し込んでしまうことです。
すると「本当は寂しい」「本当は不安」といった感情を、自分で自覚できなくなります。
ところが、人の心は「理由のない感情」を放っておけないため、無意識のうちに別の解釈でその空白を埋めようとします。
その結果、次のようなズレた解釈(=認知の歪み)が生まれやすくなるのです。
つまり、抑圧によって感情と出来事を正しく結びつけられないことが、認知の歪みを強める原因になるのです
- 抑圧が起こる
本当は「寂しい」「怖い」「不安」と感じているのに、その感情を無意識に心の奥へしまい込む。 - 感情の“正体”が見えなくなる
抑圧によって「自分は今、寂しい」と気づけない状態になる。
👉 この段階で「感情のラベル」が失われる。 - 空白を埋めようとする
人の心は「理由のない感情」をそのまま放置できないので、無意識に「別の解釈」で意味づけをしてしまう。 - 歪んだ解釈につながる
- 寂しさを認識できない → イライラとして表れる(=怒りにすり替わる)
- 不安を直視できない → 「自分がダメだからだ」と解釈してしまう
📝 抑圧が認知の歪みを引き起こす例
たとえば、恋人が連絡をくれなくて「寂しい」と感じているのに、それを抑圧して気づけないとします。
その結果:
- 「私は寂しいんだ」と気づけず、代わりに「相手は無神経だ!」と怒りが出る
- あるいは「自分に魅力がないせいだ」と自己否定にすり替わる
👉 まとめると:
抑圧によって本当の感情が見えなくなる → その空白を埋めるために理由をつくる → その理由づけがズレて、認知の歪みとして表れる。
抑圧とスキーマ(思考のクセ)の関連性
抑圧は、不快な感情や体験を無意識に心の奥へしまい込む心の働きです。
一見すると「忘れた」「大丈夫」と感じても、その感情は処理されずに残ってしまいます。
すると人は、その説明できない感情に理由を求めようとします。
「寂しい」という気持ちを抑え込んだままにすると、
- 「自分は愛されない人間なんだ」
- 「人は信じてはいけない」
といった一般化された思考のクセ(=スキーマ)として固定されてしまうのです。
つまり、抑圧によって未処理の感情や体験が心に残ることが、否定的なスキーマ(思考のクセ)を形づくる原因になるのです。
- 抑圧が起こる
つらい感情や体験を「感じたくない」と心の奥に押し込む。
例:本当は寂しいのに「大丈夫」と思い込む。 - 感情が未処理のまま残る
表面的には忘れたように見えても、心の奥には「寂しさ」「不安」「怒り」などが解決されないまま蓄積される。 - ネガティブな解釈が生まれる
理由の分からない感情の空白を埋めるために、人は無意識に説明を作り出す。
例:「自分は愛されない人間なんだ」「人は信じられない」など。 - スキーマとして定着する
そうしたネガティブな解釈が繰り返されることで、思考のクセ(スキーマ)として固定される。
その結果、似た状況に出会うたびに同じ反応や認知の歪みを生みやすくなる。
📝 抑圧がスキーマを引き起こす例
たとえば、子どもの頃に親から「泣くな」「弱音を言うな」と繰り返し叱られたとします。
そのとき感じた「寂しい」「不安だ」という気持ちを抑圧してしまうと、表面上は「何もなかった」ように振る舞えます。
しかし、未処理の感情は心に残り、やがて次のようなスキーマ(思考のクセ)として固定されます:
- 「私は気持ちを出してはいけない」
- 「人に弱さを見せると嫌われる」
- 「自分は本当の意味で受け入れられない」
こうしたスキーマは、大人になってからも人間関係や恋愛、仕事の場面で繰り返し働き、同じパターンの悩みを生みやすくなるのです。
👉 つまり、認知の歪みが「その場の解釈のズレ」だとすれば、スキーマは「人生にわたって繰り返される思考のクセ」として根づく違いがあります。
👉 まとめると:
抑圧によって感情が未処理のまま残る → その空白を埋めようとネガティブな解釈が生まれる → 繰り返されることでスキーマとして定着し、日常の思考や行動に影響を与える。
抑圧がもたらす影響の違い:認知の歪みとスキーマ
観点 | 認知の歪み | スキーマ |
---|---|---|
起こるタイミング | その場の出来事に対する解釈の瞬間で生じる | 繰り返しの体験が積み重なり、長期的に定着する |
特徴 | 本当の感情に気づけず、ズレた理由づけをする | 抑圧された体験が「思考のクセ」として固定される |
具体例 | 恋人が連絡をくれない → 本当は「寂しい」のに、「相手は無神経だ!」と怒りにすり替わる | 子どもの頃の寂しさを抑圧 → 「自分は気持ちを出してはいけない」というスキーマが定着 |
影響の範囲 | 一時的・場面ごとの誤った解釈につながる | 人間関係や仕事など、人生全般にわたって繰り返し影響する |
💡まとめると:
- 抑圧=心にしまう
- 否認=現実をなかったことにする
- 投影=他人に映す
- 認知の歪み=偏った受け止め方
- スキーマ=長期的な思考のクセ
抑圧を理解すると、他の心理学的な概念との違いも整理しやすくなります。

抑圧を理解することで得られるメリット

自分の感情のクセに気づける
抑圧を理解する最大のメリットは、自分の感情のパターンに気づけることです。
「なぜか人の前で緊張してしまう」「いつも同じことで落ち込む」といった繰り返される反応の裏には、抑圧された感情が隠れている場合があります。
その仕組みを知るだけでも、感情に振り回されにくくなり、冷静に対処できるようになります。
人間関係のトラブルを減らせる
抑圧に気づけないと、無意識にたまった怒りや不安が、思わぬ形で人間関係に表れることがあります。
たとえば、抑え込んでいた不満が突然爆発して大げんかになったり、相手に冷たい態度を取ってしまったりすることです。
抑圧を理解していれば「自分は不満を溜め込みやすいタイプだから、早めに伝えよう」と工夫でき、余計な衝突を防ぐことができます。
自己理解が深まり成長につながる
抑圧を知ることは、自己理解の大きな一歩です。
「自分は弱いから感情を抑えている」のではなく、「心が無意識に守ってくれている」と理解できれば、自分を責めずに受け止めやすくなります。
その結果、自己受容が進み、ストレス対処や人間関係スキルの向上など、成長につながるプラスの変化を得られます。
💡まとめると、抑圧を理解するメリットは:
- 感情のクセに気づきやすくなる
- 人間関係のトラブルを未然に防げる
- 自己理解と成長につながる
抑圧は一見ネガティブに見えますが、仕組みを理解してうまく活かせば、人生をより生きやすくするヒントになるのです。
抑圧に気づいたときの対処法と活用例

セルフモニタリング(日記・感情の記録)
抑圧は無意識に働くため、自分で気づくのが難しい特徴があります。
そのために役立つのがセルフモニタリングです。
具体的には、
- 日記に「今日あった出来事と感情」を書く
- 「本当はどう感じていたか?」を後から振り返る
といった方法です。
書き出すことで「自分は怒っていたのに、気づかないふりをしていた」といった抑圧に気づきやすくなります。
カウンセリングや心理療法でのアプローチ
抑圧が深く関わる場合は、専門家のサポートが効果的です。
カウンセリングや心理療法(認知行動療法・スキーマ療法など)では、安心できる環境で少しずつ抑圧された感情に向き合うことができます。
特にトラウマや長期的な心身の不調がある場合は、自己流で無理に掘り返すよりも、専門家と一緒に安全に取り組むことが大切です。
日常生活でのセルフケアの工夫(マインドフルネス・休息など)
日常の中でも、抑圧に気づきやすくなる工夫は可能です。
- マインドフルネス:今この瞬間の感情や体の感覚に意識を向けることで、抑圧していた気持ちに気づける
- 十分な休息:睡眠不足や疲労があると感情を抑え込みやすくなるため、体を整えることが抑圧の軽減につながる
- 安心できる相手との会話:信頼できる友人に話すことで、抑圧していた気持ちが言葉になりやすい
こうした習慣を続けることで、抑圧が必要以上に強く働かない「心の余裕」を作ることができます。

💡まとめると、抑圧に気づいたときの対処法は:
- 書き出して客観視する(セルフモニタリング)
- 専門家と取り組む(カウンセリング)
- 生活習慣を整えて感情を受け止めやすくする(セルフケア)
👉 抑圧を「悪いもの」ととらえるのではなく、心の仕組みを理解して付き合い方を工夫することがポイントです。
まとめ|抑圧の具体例から見える心の働き
抑圧は心を守るが、行きすぎると不調につながる
ここまで見てきたように、抑圧は心を守る防衛機制のひとつです。
嫌な記憶や感情を無意識に押し込めることで、日常生活を続ける力を与えてくれます。
しかし、抑圧しすぎると感情が心や体に別の形で表れ、不安・ストレス・心身症・PTSDなどの不調につながるリスクもあります。
つまり、抑圧は「適度なら役立つが、過剰だと逆効果になる」という両面性を持っているのです。
日常の小さな気づきが自己理解の第一歩
大切なのは、抑圧を完全になくすことではありません。
むしろ「自分は感情をしまい込みやすいタイプかもしれない」と小さな気づきを持つことが、自己理解の第一歩になります。
- 「なぜか最近イライラが続く」
- 「眠れない日が多い」
- 「人間関係で同じパターンを繰り返している」
こうした日常のサインに目を向けることで、抑圧に気づき、感情と上手に付き合えるようになります。
💡まとめると:
- 抑圧は心を守る仕組みだが、行きすぎると不調の原因になる
- 抑圧に気づくには、日常の小さなサインを観察することが大切
- 自己理解を深めることで、抑圧を「心を苦しめる要因」から「成長のヒント」に変えられる
