「考えたくないのに頭から離れない…」「夜になると反省や後悔が止まらない…」そんな 自動思考(無意識に浮かぶ考えやイメージ) に振り回されていませんか?
実は、自動思考を“無理に止めよう”とするほど逆に強まってしまうことが心理学でも分かっています。大切なのは「消すこと」ではなく「付き合い方を変えること」。
この記事では、CBT(認知行動療法による改善トレーニング)、マインドフルネスやACT(思考と距離を取る方法)、さらに運動・睡眠・集中といった生活習慣の工夫まで、初心者でも実践できるステップをわかりやすく解説します。
読み終えるころには、「思考を止める」ではなく「思考に支配されない」ための具体的なヒントがきっと見つかるはずです。ぜひ最後まで読んでくださいね。
自動思考とは?
私たちが日常生活を送るなかで、ふと頭に浮かぶ考えやイメージのことを 「自動思考」 と呼びます。
例えば――
- 上司に軽く注意された → 「自分はダメなんだ」
- 友人にLINEを既読スルーされた → 「嫌われたのかもしれない」
- 予定通りに物事が進まない → 「きっと最悪な結果になる」
このように、自動思考は一瞬で浮かび、しかも無意識に近いレベルで起こります。
ポイントは、これらの思考が「事実」ではなく「解釈」であること。
しかし私たちはそのまま受け取ってしまうため、感情や行動に大きな影響を与えます。
- ポジティブな自動思考 → 「きっと大丈夫」 → 気持ちが軽くなる
- ネガティブな自動思考 → 「絶対失敗する」 → 不安や落ち込みが強まる
つまり、自動思考は 心のフィルター のような存在です。
同じ出来事に出会っても、このフィルターを通すことで「安心できる人」もいれば「不安に押しつぶされる人」もいるのです。
初心者の方が理解しやすいようにまとめると――
- 自動思考は「頭の中で自動再生されるナレーション」
- 多くは瞬間的で、自分ではコントロールできない
- でも気づいて付き合い方を学べば、心の状態を大きく変えられる

なぜ「自動思考を止めよう」としてもうまくいかないのか

多くの人が「ネガティブな自動思考を止めたい!」と思います。
しかし残念ながら、思考を無理に抑え込もうとすると逆に強まってしまうのです。
シロクマ実験の例
心理学で有名な「シロクマ実験」というものがあります。
「絶対にシロクマのことを考えないでください」と言われると、逆に頭の中に白いクマが浮かんできませんか?
これと同じで、「考えないようにしよう」と意識すると、かえってその思考が増えてしまいます。
思考は風船のようなもの
自動思考を「風船」に例えると分かりやすいです。
- 強く押さえ込むと → 反発して大きく膨らむ
- そっと手を放して見送ると → 勝手に空に飛んでいく
つまり、「止める」「消す」ではなく「距離を取る」 ことが大事なのです。
付き合い方を変えるのがカギ
- 自動思考を完全に消すことはできない
- でも「出てもいいや」「気にしなくてもいいや」と思えるようになると、自然に弱まっていく
- そのための方法が CBT(改善するトレーニング) や マインドフルネス/ACT(反応しないトレーニング) です
自動思考を改善するトレーニング(修正する練習)

自動思考は止めようとしても消えません。
しかし、浮かんだ考えを「検証・修正」して、より現実的でバランスの取れた考えに変えることはできます。
この方法は 認知行動療法(CBT) で広く使われています。
トレーニングの流れ
自動思考を改善する基本ステップは以下の通りです。
- 出来事と自動思考を書き出す
- 例:上司に注意された → 「自分は無能だ」
- その考えの根拠と反証を検討する
- 根拠:「確かにミスをした」
- 反証:「前のプロジェクトでは評価された」
- バランスの取れた新しい考えを探す
- 「改善点はあるが、全てがダメなわけではない」
効果
このように書き出して検証することで、
- 思考の偏り(認知の歪み) に気づける
- 感情が落ち着き、現実的に状況を捉えられるようになる
- ネガティブ思考に振り回されにくくなる
初心者へのポイント
「頭の中だけで考え直そう」とすると、また同じループにはまりやすいです。
だからこそ 紙に書き出す(ワークシート方式) の方が効果的。
思考を外に出すだけで、自然に客観視できるようになります。

自動思考が湧きにくく感じられるトレーニング(反応しない練習)

「改善トレーニング(CBT)」が“考えを修正する練習”なのに対して、ここで紹介するのは “反応しない練習”。
つまり「自動思考は出てきてもOK。そのままにして距離を取る」ことで、結果的に湧きにくく感じられるようになります。
① マインドフルネス
- 思考をコントロールしようとせず、ただ観察する方法。
- よく使われる比喩が「川に流れる葉っぱ」。
- 思考を葉っぱに見立てて川に流すように、ただ眺めてやり過ごす。
- 実践法:
- 呼吸瞑想(息に注意を戻す)
- 歩行瞑想(歩く一歩一歩を意識)
- 食事瞑想(食感や香りを丁寧に味わう)
- 効果:考えが浮かんでも膨らまず、自然に弱まる。

② ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
- CBTの発展形で、「自動思考を変える」のではなく そのままにしておく のが特徴。
- キーワードは 脱フュージョン(思考と自分を切り離すスキル)。
- 例:
- 「私は無能だ」と考える → 「『私は無能だ』という考えが浮かんでいる」とラベル付けする。
- こうすると「思考=事実」という思い込みが薄れ、支配力が弱まる。
- 結果として「湧いても邪魔に感じない → 湧きにくい」と体感できる。

③ 習慣・ライフスタイル介入
心理的トレーニングに加えて、生活習慣を整えることでも自動思考は減りやすくなります。
- 運動習慣
- 有酸素運動は不安や反芻思考を減らす研究が多数。
- 体を動かすとストレスホルモンが調整され、頭の中がすっきりする。
- 睡眠改善
- 寝不足は脳の「ネガティブバイアス(悪い方向に考えやすいクセ)」を強める。
- 睡眠を整えることで、自動思考も過剰に出にくくなる。
- 集中作業(フロー体験)
- 強い集中に入ると余計な思考が入り込む余地が減る。
- → 「集中すればいいのでは?」という直感は科学的に裏付けあり。
✅ ポイントまとめ
- マインドフルネス → 思考を眺めて流す
- ACT → 思考をそのままにして距離を取る
- 習慣改善 → 脳と体を整えて思考が湧きにくい土台を作る
これらを組み合わせると「思考を止めなくても、自然に湧きにくい状態」に近づけます。
自動思考が湧きにくく・改善される理由

ここまで紹介してきた 改善トレーニング(CBT) と 反応しないトレーニング(マインドフルネス・ACT・生活習慣改善) を組み合わせることで、自動思考は「湧いても膨らまない」「自然に減っていく」状態に近づきます。
CBT(認知行動療法)
- 思考を検証・修正することで、ネガティブな解釈の偏りに気づける。
- 新しい視点を持てるようになり、感情も安定する。
- → 「浮かんでもすぐ修正できる」ため、思考に支配されにくくなる。
マインドフルネス
- 浮かんだ思考に反応せず流す習慣を身につける。
- 思考が「ただの現象」として扱えるようになる。
- → 結果的に思考が長引かず、湧きにくいと感じられる。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
- 脱フュージョンにより「思考=事実」という思い込みを弱める。
- 「思考は思考」として距離を取れるため、不安や否定的な思考が出ても邪魔にならない。
- → 「湧いても影響がない=湧きにくい」と体験的に感じられる。
習慣・ライフスタイル改善
- 運動:脳内物質が整い、反芻思考が減る。
- 睡眠:十分な休養でネガティブ思考の偏りを防ぐ。
- 集中(フロー):強い没頭状態は、思考の入り込む余地を少なくする。
- → 心身の土台を整えることで、思考の暴走自体が弱まる。
総合すると…
- CBT → 修正する力
- マインドフルネス → 反応しない力
- ACT → 距離を取る力
- 生活習慣改善 → 脳と体を整える力
この4つが揃うと、
「思考を止める」ではなく「思考に振り回されない」状態が作られます。
その結果として、自動思考は “改善され、さらに湧きにくく感じられる” ようになるのです。

