「人の不幸は蜜の味」──そんな言葉を聞いたことはありませんか?
誰かの失敗や不幸を見て、
ついホッとしたり、ちょっとスカッとしたり。
そんな自分を「性格が悪いのかな…」と責めてしまう人も多いはず。
でも実は、それは誰にでもある自然な感情なんです。
この記事では、
- シャーデンフロイデとは何か?
- なぜ人は他人の不幸を喜んでしまうのか?
- その感情とうまく付き合う方法
を、わかりやすく解説します。
シャーデンフロイデとは何か?意味と「人の不幸は蜜の味」の関係

シャーデンフロイデの語源と由来
シャーデンフロイデという言葉は、ドイツ語が由来です。
- 「Schaden(シャーデン)」=害・損害
- 「Freude(フロイデ)」=喜び・楽しみ
この2つの単語がくっついて、「他人の不幸や不運を見て感じる喜び」という意味になります。
たとえば、ライバルが試験に落ちたときにちょっとスッキリするような気持ちが、まさにシャーデンフロイデです。
海外でもそのままSchadenfreudeという単語が英語圏で使われることがあり、「翻訳しにくいドイツ語」として有名なんですよ。
「人の不幸は蜜の味」とはどういう意味か
日本語で「人の不幸は蜜の味」ということわざがあります。これは、
他人の不幸を見て、なんとも言えない甘い快感を覚えること
を表す言葉です。
「蜜の味」とは、甘くて美味しいものの象徴。つまり、他人の失敗や不運が、自分にとってちょっと心地よいものになるという、人間の裏の感情を表しています。
例えば:
- 苦手な同僚が上司に怒られているのを見て、少しホッとする
- 完璧だと思っていた芸能人のスキャンダルに、なぜか目が離せない
こんなとき、私たちは無意識に「人の不幸は蜜の味」の感情を抱いているんです。
日本語での言い換え・類義語はある?
「シャーデンフロイデ」に近い日本語表現には、以下のようなものがあります:
- 「ざまあみろ」
→ 相手の不幸をあざ笑うニュアンスが強い言葉です。 - 「溜飲(りゅういん)が下がる」
→ 不満や怒りがすっと晴れること。相手の失敗を見てスッキリする感覚に近いですね。
ただし、日本語には「シャーデンフロイデ」ほどピッタリ当てはまる単語は少なく、どれも部分的なニュアンスを表している感じです。
シャーデンフロイデが使われる場面・例文
実際に「シャーデンフロイデ」という言葉が使われるのは、次のような場面です:
- ニュースやゴシップ
→ 有名人の不倫報道を興味津々で見てしまうとき。 - スポーツ観戦
→ 強豪チームが負けた瞬間に「ざまあ」と思うとき。 - 職場や学校
→ 成績トップの同級生が先生に叱られているのを見て、内心うれしいとき。
例文で言うと、こんな感じです:
「彼がプロジェクトに失敗したとき、少しだけシャーデンフロイデを感じてしまった。」
つまり、「他人の不幸を見てスカッとする感情」がシャーデンフロイデなんですね。
シャーデンフロイデは、誰にでも心の奥に潜んでいる人間らしい感情です。
しかし同時に、ちょっと後ろめたい気持ちも伴うのが面白いところですね。
人はなぜ他人の不幸を喜んでしまうのか?心理的メカニズム

社会的比較理論とシャーデンフロイデ
まず、シャーデンフロイデを理解するうえで大事なのが、社会的比較理論です。
これは心理学者のレオン・フェスティンガーが提唱した理論で、簡単に言うと:
- 人は自分の価値や立ち位置を確認するために、他人と比較してしまう生き物である
という考え方です。
たとえば:
- 友達より給料が低いと落ち込む
- 同僚が失敗すると「自分の方がマシ」とホッとする
こうした比較の結果、自分より上だと思っていた人が失敗すると、優越感や安心感を覚えるんですね。これがシャーデンフロイデにつながります。
公正世界仮説と「ざまあみろ」の感情
もう一つ関係するのが、公正世界仮説という心理のクセです。
これは、
「世の中は公平で、悪いことをした人には悪いことが返ってくる」
という無意識の思い込みのこと。
例えば:
- 不倫した芸能人が叩かれているのを見て「当然だ」と思う
- いじめっ子がトラブルに遭うと「ざまあみろ」と感じる
こういうとき、人は「自分の正義が証明されたような気持ち」になり、シャーデンフロイデを強く感じます。

優越感や安心感との関係
シャーデンフロイデには、優越感や安心感という感情が深く関わっています。
なぜなら:
- 他人の失敗を見ることで「自分はまだマシだ」と感じられる
- 自分が劣っていると思っていた相手が転ぶと、「自分にも勝てるんだ」と思える
つまり、シャーデンフロイデは、自分のプライドを守る防衛本能でもあるんです。
特に競争が激しい環境(職場、学校、スポーツなど)では、この感情が生まれやすいと言われています。
脳科学でわかる快楽反応(報酬系の活性化)
さらに面白いのが、脳科学の研究です。
実験によると:
- 他人が失敗する様子を見たとき
- 脳の報酬系(快楽を感じる部分)が活性化する
という結果が出ています。
つまり、人の不幸を見たとき、脳は「気持ちいい!」と感じてしまう仕組みがあるんですね。
これは「性格が悪いから」というより、人間に備わった本能的な反応といえます。
このように、シャーデンフロイデは、
- 他人との比較
- 公平を求める心
- 自分を守ろうとする本能
- 脳の仕組み
など、いくつもの心理メカニズムが絡み合った感情なんです。
人間らしいけれど、ちょっと複雑で、後ろめたさを伴う感情ですよね。
シャーデンフロイデを感じる具体的なシーンと事例

日常生活でよくある例
シャーデンフロイデは、特別な人だけが感じるものではありません。私たちの日常生活の中にも、たくさん潜んでいる感情です。
例えばこんな場面で起こりやすいです:
- 苦手な同僚が上司に叱られているのを見たとき
- 自慢ばかりしていた友人が失敗したとき
- 偉そうだった人がミスをしたとき
こういうとき、心の中で 「ちょっとスッキリした」「ざまあみろ」 と思ってしまうことがありますよね。
これは決して珍しいことではなく、多くの人が一度は経験する自然な感情なんです。
芸能ニュースやゴシップに惹かれる心理
芸能ニュースやゴシップをついつい見てしまうのも、シャーデンフロイデの表れです。
例えば:
- 完璧に見えた有名人の不倫やスキャンダル
- 成功者の転落ニュース
こうした報道に人が惹かれるのは、
- 「自分より上の人が失敗した」という安心感
- 「やっぱりあの人も人間なんだ」という親近感
- 「正義が成された」という感覚
が関わっています。
特にネットニュースや週刊誌は、こうした感情を刺激することでアクセス数や販売部数を伸ばしているとも言われています。
スポーツ観戦や競争社会でのシャーデンフロイデ
スポーツ観戦でもシャーデンフロイデはよく見られます。
例えば:
- 圧倒的強豪チームがまさかの敗北を喫したとき
- ずっと調子に乗っていた選手がミスをしたとき
こうした場面で、観客が「ざまあみろ!」「スカッとした!」と思うことは珍しくありません。
また、会社や学校など競争社会でも同じです。
- 成績優秀な人が失敗すると、周囲が内心ホッとする
- 同僚が昇進を逃したのを見て、安心する
こういった感情も、シャーデンフロイデの一種なんです。
SNSの炎上を楽しむ心理
SNSの炎上を「見に行ってしまう」「追いかけてしまう」現象も、シャーデンフロイデが影響しています。
たとえば:
- インフルエンサーの失言が大炎上
- 有名人のプライベートが暴露される
そういったニュースに多くの人が群がるのは、
- 「普段チヤホヤされている人が叩かれているのを見るとスカッとする」
- 「自分の正義感が満たされる」
- 「面白いエンタメとして消費する」
といった心理が働くからです。
このように、SNSはシャーデンフロイデを加速させやすい環境でもあります。
このように、シャーデンフロイデは
- 日常の小さな場面
- 芸能ニュース
- スポーツ
- SNS
あらゆるところに顔を出す、人間らしくも複雑な感情です。
シャーデンフロイデを感じるのは悪いこと?罪悪感との向き合い方

シャーデンフロイデは異常心理か?
シャーデンフロイデを感じたとき、多くの人がこう思います。
「他人の不幸を喜んでしまうなんて、私って性格が悪いのかな?」
でも安心してください。心理学的には、シャーデンフロイデは異常でも、病的でもありません。
確かに道徳的には「良いこと」ではないかもしれませんが、人間なら誰しも多少は抱えるごく自然な感情なのです。
「誰にでもある感情」という心理学の見解
心理学の研究でも、
- シャーデンフロイデは普遍的な感情である
- 自分を守るための心の働きである
とされています。
人は自分の価値や立ち位置を守るため、無意識に他人と比較したり、自分より優れた人が失敗するとホッとしたり優越感を覚えたりするのです。
これは人間の防衛本能のようなもので、決して「異常」や「人格の問題」ではありません。
例えば:
- 完璧に見える人の弱点を知って安心する
- 偉そうにしている人の失敗にスカッとする
こういった気持ちは、多かれ少なかれ誰もが経験するものです。
罪悪感を減らすための考え方
シャーデンフロイデを感じると、多くの人が罪悪感を覚えます。
でも次のように考えると、気持ちが楽になります。
- 自分を責めすぎないこと
→ 感じるだけなら誰にも迷惑をかけていない - 感情と行動を切り離す
→ 思っただけで実際に相手を攻撃していないなら問題ない - 自分の中にも負の感情があると認める
→ 完璧な人間はいない
例えばこう自分に言い聞かせてみましょう。
「ああ、またシャーデンフロイデを感じたな。でもそれは人間だから当然のこと。行動に移さなければ大丈夫。」
これだけで、ずいぶん罪悪感は和らぎます。
感情をコントロールするヒント
シャーデンフロイデをゼロにすることは不可能ですが、感情に振り回されないようにすることは可能です。
以下のようなヒントがあります:
- 客観視するクセをつける
→ 「いま自分はシャーデンフロイデを感じているな」と意識するだけで冷静になれます。 - 深呼吸やマインドフルネスを試す
→ 感情に飲み込まれそうなときに有効です。 - ポジティブなことに意識を向ける
→ 他人の不幸ではなく、自分の小さな成功や幸せに目を向ける。
感情は自然に湧いてくるものです。だからこそ、
- 「感じることは仕方ない」
- 「でも振る舞いでコントロールできる」
と考えることが、シャーデンフロイデとうまく付き合うコツなんですね。
「とはいえ、頭では分かっていても、
つい湧いてくるネガティブな感情に振り回されてしまうこともありますよね。
そんなときは、感情を一歩引いて見つめる練習が役立ちます。
たとえば、【Awarefy】
というアプリを使うと、
日々の感情を記録したり、思考を整理したりしながら、
自分の心の動きを客観的に捉える練習が簡単にできます。
「自分は今、どんな気持ちなんだろう?」と立ち止まることで、
シャーデンフロイデのような感情にも冷静に対処できるようになりますよ。」
このように、シャーデンフロイデを感じる自分を過剰に責める必要はありません。
誰にでもある感情だと理解し、上手に距離を取ることが大切です。
シャーデンフロイデが人間関係に与える影響とトラブル回避法

周囲に悟られないようにするには
シャーデンフロイデは人間らしい感情ですが、周囲に悟られると人間関係に悪影響を及ぼす可能性が高いものです。
例えば:
- 友達の失敗話に思わず笑ってしまう
- 同僚のトラブルを聞いてニヤリとしてしまう
こんな態度を見られたら、
「この人、性格悪いのかな…」
と思われかねません。
周囲に悟られないためには、以下のようなポイントが大切です:
- 表情管理を意識する
→ 嬉しそうな顔や含み笑いを我慢する - 相手に寄り添う言葉を使う
→ 「それは大変だったね」と共感を示す - すぐに話題を切り替える
→ 深掘りせず、別の話題に移る
「感情は自然、表現は選べる」という意識を持つことが、トラブルを防ぐカギです。
シャーデンフロイデによる人間関係のトラブル例
シャーデンフロイデを表に出してしまうことで、次のようなトラブルが起こることがあります。
- 信頼を失う
→ 悩みを打ち明けたのに笑われたと感じ、距離を置かれる - 陰で「性格が悪い」と噂される
→ 小さな笑いが誤解を招き、悪い評判が広がる - 孤立する
→ 周囲に「一緒にいて安心できない」と思われる
人間関係は感情のやりとりで成り立っています。シャーデンフロイデをそのまま表に出すのは大きなリスクです。
トラブルを防ぐためのコミュニケーション術
シャーデンフロイデを感じたとしても、表現次第で人間関係を守ることができます。以下のコミュニケーション術を試してみましょう。
- 相手の感情をまず受け止める
→ 「それはショックだったね」「辛かったね」と共感の言葉を入れる - 笑いをぐっとこらえる
→ 内心で思っても表情に出さない - 話題を変えるスキルを身につける
→ 「そういえば○○の話聞いた?」など、別の話題に自然に誘導する
こうした小さな気遣いが、「感じるけど悟られない」賢い大人の振る舞いにつながります。
他人の不幸を笑わない習慣を身につけるには
とはいえ、シャーデンフロイデを感じる自分をゼロにするのは無理です。大事なのは表に出さない習慣を作ることです。
習慣づけのヒント:
- 「それを言ったら相手はどう思うか?」を一瞬考える
→ 反射的な言動を減らせます - ニュースやゴシップを見すぎない
→ シャーデンフロイデを刺激しやすい情報から距離を置く - ポジティブなことに目を向ける
→ 他人の不幸より、自分の小さな幸せを数える習慣をつける
たとえば:
「あの人も辛いんだろうな」「自分にも同じことが起きたら嫌だな」と考えてみると、自然と笑えなくなります。
人の不幸を笑わない人は、周囲から信頼されやすいです。少しずつ練習していけば、きっと変わっていけますよ。
このように、シャーデンフロイデは
- 感情としては自然
- でも人間関係では扱いに注意が必要
という、ちょっと厄介だけれど人間らしい感情です。上手にコントロールすることが大人の知恵なんですね。
まとめ:シャーデンフロイデと上手に付き合うために

シャーデンフロイデを否定しすぎない大切さ
ここまで読んでみて、
「やっぱりシャーデンフロイデって悪い感情なんじゃないか…」
と思った人もいるかもしれません。
でも大切なのは、シャーデンフロイデを完全に否定しすぎないことです。
なぜなら:
- シャーデンフロイデは人間なら誰でも抱く自然な感情
- 完全に消そうとすると逆にストレスがたまる
- 「感じる=悪」ではなく、「行動に移さないこと」が大事
例えば、自分の中にシャーデンフロイデが芽生えたとき、
「ああ、人間だからこう思うんだな」
と受け止めるだけでも、心が楽になります。
自分の感情とどう向き合うか
シャーデンフロイデとうまく付き合うには、
- 感じることは悪くない
- 表に出さず、行動を選ぶ
という意識が重要です。
具体的にはこんなふうに向き合ってみましょう:
- 自分の感情をラベリングする
→ 「今、自分はシャーデンフロイデを感じている」と言葉にするだけで、感情に飲み込まれにくくなります。 - 視点を変える
→ 「自分も同じ立場になったら嫌だな」と想像してみる。 - 良い面に目を向ける
→ 他人の不幸に注目するより、自分の成長や幸せを探す方が心が軽くなります。
たとえば:
「あの人も失敗するんだな。でも自分も気をつけよう。」
と思えるだけで、ずいぶん優しい気持ちになれます。
関連する心理学用語・関連記事紹介
もしシャーデンフロイデに興味を持ったら、以下の心理学用語も面白いですよ:
- 社会的比較理論
→ 人は他人と比べることで自分を評価するという理論。シャーデンフロイデの根底にあります。 - 公正世界仮説
→ 世の中は公平であるべきという無意識の信念。他人の不幸を「当然だ」と思う心理に関連します。 - カタルシス
→ 感情を吐き出してスッキリする現象。シャーデンフロイデ的笑いも一種のカタルシスかもしれません。
シャーデンフロイデは、
- 人間らしく自然な感情
- しかし扱い方を間違えると人間関係のトラブルの元
という、ちょっと厄介だけど興味深い感情です。
大事なのは、
「感じることは仕方ない。でも行動をコントロールする」
というスタンスです。
そうすれば、シャーデンフロイデとうまく付き合いながら、自分も周りも大切にする生き方ができるはずです。
