「ストレスを感じると、急に体がこわばる」「頭が真っ白になって何も言えなくなる」──そんな経験、ありませんか?
実はそれ、脳があなたを守るために起こしている“闘争逃走反応”という自然な仕組みなんです。
「なぜ緊張すると体が固まるの?」「不安をコントロールできないのは弱いから?」
そんなモヤモヤを、心理学と脳科学の視点からやさしく解き明かします。
この記事では、
- 闘争逃走反応の基本的な仕組み
- “戦う・逃げる・固まる”の3パターンの違い
- ストレスをリセットする具体的な方法
を、初心者にも分かりやすく解説します。
読むほどに、「自分の反応には意味があったんだ」と納得でき、ストレスと上手に付き合うヒントが見つかるはずです。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
闘争逃走反応とは?ストレスで起こる「戦う・逃げる・固まる」反応の基本

私たちがストレスや恐怖を感じたとき、体が勝手に緊張したり、心臓がドキドキしたり、頭が真っ白になることがあります。
これはすべて、脳と体が危険を察知して作動させる「闘争逃走反応(とうそうとうそうはんのう/Fight-or-Flight Response)」という仕組みによるものです。
闘争逃走反応の意味を簡単に解説(心理学的な定義)
闘争逃走反応とは、危険やストレスに直面したときに、自律神経が体を“緊急モード”に切り替える生理的反応のことです。
「闘争=Fight(戦う)」「逃走=Flight(逃げる)」のどちらかを選んで、生き延びるための行動を瞬時に取れるようにするのが目的です。
たとえば、森の中で猛獣に出会ったとき――
体は考えるより先に、戦うか逃げるかを準備します。
この瞬間、脳は「命の危険だ」と判断し、アドレナリンを分泌。呼吸や心拍数を上げて、筋肉に血流を集中させます。
つまり、闘争逃走反応は「パニック」ではなく、生命を守るための合理的な反応なのです。
ウォルター・キャノンが発見した生理的メカニズム
この反応を最初に理論化したのは、アメリカの生理学者ウォルター・B・キャノン(Walter Cannon)です。
彼は、「危険を察知すると交感神経が活発化し、アドレナリンが分泌される」ことを発見しました。
キャノンはこの現象を「闘争逃走反応(Fight-or-Flight Response)」と名づけ、ストレス科学の原点を築きました。
交感神経が働くと体に起きる変化
闘争逃走反応が起こると、自律神経のうち「交感神経」が優位になります。
すると、次のような変化が瞬時に起こります。
| 体の変化 | 意味 |
|---|---|
| 心拍数の上昇 | 筋肉に酸素とエネルギーを送り、瞬時に動けるようにする |
| 呼吸数の増加 | 酸素を多く取り込み、脳を覚醒させる |
| 瞳孔の拡大 | 周囲の情報をすばやく捉えるため |
| 血流の集中 | 消化器官などへの血流を絞り、筋肉に血を送る |
このように、体が一瞬で“戦闘態勢”に入るのです。
ストレスが“危険信号”として脳に伝わる仕組み
では、なぜストレスでこの反応が起きるのでしょうか?
そのカギを握るのが、脳の「扁桃体(へんとうたい)」です。
扁桃体は“危険レーダー”のような働きを持ち、恐怖や不安を感じると「危険だ!」と警報を出します。
この信号が視床下部を通して全身に伝わり、交感神経を刺激してアドレナリンを放出――。
結果として、心も体も「戦うか逃げるか」のモードに切り替わるのです。
なぜ人はストレスで「戦う・逃げる・固まる」のか?心理的メカニズムを理解する

私たちは、危険やプレッシャーに直面すると、「怒って反発する(戦う)」「避ける・逃げる(逃走)」「動けなくなる(凍結)」という3つの反応のいずれかを無意識に取ります。
これらは、脳が体を守るために自動的に作動させる“生存システム”です。
🧠 脳の扁桃体が“危険”を検知して体を守る
ストレス反応の出発点は、脳の扁桃体(へんとうたい)です。
扁桃体は感情を司る部位で、「危険」「不快」「恐怖」などを瞬時に検知します。
たとえば、上司に怒られたり、SNSで批判を受けたりしたとき、扁桃体はそれを「脅威」と判断。
その信号を視床下部→自律神経→副腎へと送り、アドレナリンやコルチゾール(ストレスホルモン)を放出します。
この仕組みが、いわゆる「闘争逃走反応」の起点です。
理性より先に感情が反応してしまうのは、この脳の構造に理由があります。
⚔️ Fight(戦う)/🏃 Flight(逃げる)/❄️ Freeze(固まる)それぞれの意味と違い
人間のストレス反応には、大きく3つのパターンがあります。
| 反応タイプ | 行動例 | 心理的な背景 |
|---|---|---|
| Fight(闘争) | 怒る・反論する・支配的になる | 相手を打ち負かして安全を確保しようとする |
| Flight(逃走) | 距離をとる・逃げる・沈黙する | 危険から距離を置くことで安全を守る |
| Freeze(凍結) | 動けない・頭が真っ白・何も感じない | 捕食者から身を隠す“死んだふり”の本能的反応 |
たとえば、
- 面接で緊張して言葉が出ないのは「Freeze」
- 不満を爆発させるのは「Fight」
- プレッシャーから逃げたくなるのは「Flight」
すべて、脳が“生き延びるために最適だ”と判断している行動なのです。
🌐 現代社会では「上司・SNS・人間関係」でも同じ反応が起きる
この反応は、かつての“肉体的な危険”に限らず、現代社会の心理的ストレスでも同じように起きます。
- 上司に注意される → 「戦う(言い返す)」または「逃げる(沈黙する)」
- SNSで批判を受ける → 「逃げる(削除する)」または「凍結(思考停止)」
- 人間関係のトラブル → 「迎合する(後述のFawn反応)」
つまり、私たちの脳は現代社会の刺激を“肉体的危険”と誤認してしまうのです。
このため、ストレス社会では闘争逃走反応が慢性化しやすく、疲労や不安、過敏さの原因になります。
🧊 凍結反応(Freeze)は脳の防衛反応
脳が“これ以上動くと危険”と判断すると、体を一時的に停止させます。
これはエネルギーを節約するというよりも、「動かずにやり過ごす」ための防御反応です。
こうした反応を、心理学では凍結反応(Freeze Response)**と呼びます。
トラウマを経験した人が、危険を思い出した瞬間に体が固まってしまうのもこの反応によるものです。
Freezeは、脳が命を守るために“自動的にブレーキをかけている状態”*なのです。
闘争逃走反応の仕組みを作る3つの理論モデル(心理学・神経科学の視点)
闘争逃走反応は、長年にわたって多くの心理学者・神経科学者が研究してきた科学的に裏づけのある生理・心理メカニズムです。
ここでは、この反応の理解を深めるための3つの理論と、現代のトラウマ研究で注目される「5Fモデル」を紹介します。
①キャノンの「闘争逃走反応理論」:ストレス研究の原点
アメリカの生理学者ウォルター・B・キャノン(Walter Bradford Cannon)は、動物の観察から「脅威を感じたとき、体が自動的に戦うか逃げる準備をする」ことを発見しました。
キャノンは、この反応が起こる過程を次のように説明しました。
- 脳の扁桃体が危険を感知する
- 視床下部が自律神経を刺激
- 交感神経が活性化し、副腎からアドレナリンが分泌される
- 心拍数上昇・呼吸促進・血圧上昇など、瞬時に“戦闘態勢”へ
この理論は、後のストレス研究やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の理解に大きな影響を与え、「ストレス生理学の原点」と呼ばれています。
②セリエの「ストレス理論(汎適応症候群)」:3段階の反応モデル
生理学者ハンス・セリエ(Hans Selye)は、キャノンの理論を発展させ、ストレスへの反応を3段階のプロセスとして整理しました。
| 段階 | 内容 | 身体・心理の変化 |
|---|---|---|
| ①警告反応期(Alarm Stage) | ストレスに気づき、闘争逃走反応が起こる | アドレナリン分泌・心拍上昇・筋肉緊張 |
| ②抵抗期(Resistance Stage) | ストレスに適応しようと頑張る | 集中力や耐性の一時的上昇 |
| ③疲弊期(Exhaustion Stage) | 長期化すると限界に達し、心身が疲弊 | 免疫低下・うつ・バーンアウト |
つまり、短期的なストレスは身を守るが、長期的なストレスは体を蝕むということ。
この理論から、「休むことも生存戦略の一部」という考え方が生まれました。

③ポージェスの「ポリヴェーガル理論」:安心・闘争・凍結の3つの神経システム
ポリヴェーガル理論とは、1994年に心理学者スティーブン・ポージェスが提唱したまだ仮説段階の理論です。
従来の「交感神経=戦う・逃げる」「副交感神経=休む」という2分法では、ストレスで“動けなくなる”凍結反応(Freeze)を説明できませんでした。
そこでポージェスは、副交感神経の中に「安心」と「凍結」という2つのモードがあると考えました。
この発想から、彼は人の自律神経を「安心・闘争・凍結」の3つの神経システムとして整理しました。
| 神経系 | 状態 | 行動・感情の特徴 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 腹側迷走神経系(Ventral Vagal) | 安心・社会的つながり | リラックス・笑顔・共感 | 安全の維持 |
| 交感神経系(Sympathetic) | 闘争・逃走反応 | 緊張・怒り・焦り | 危機からの回避 |
| 背側迷走神経系(Dorsal Vagal) | 凍結・解離(感情が切り離される) | 無気力・無反応・エネルギー遮断 | 極限状態での防衛 |
この理論の重要なポイントは、
「安全感がないと、人は社会的つながりを持てない」
という点です。
つまり、ストレスを和らげるには「安心モード(腹側迷走神経)」を取り戻すことが何より大切。
※ただし、神経科学的な実証はまだ進行中であり、ポリヴェーガル理論は臨床的には有用だが、科学的には検証途中の仮説とされています。

「Flop(脱力)」と「Friend(融和)」まで含めた5Fモデル(現代的トラウマ研究より)
近年のトラウマ心理学では、人間の防衛反応は「Fight(闘争)」「Flight(逃走)」「Freeze(凍結)」の3つだけでなく、
「Flop(脱力)」「Friend(融和)」を加えた5Fモデルとして整理されています。
これは、危険や強いストレスに直面したとき、
脳と自律神経がどのように“生き延びるか”を選択する生存メカニズムを示すものです。
5Fモデルの概要と行動の特徴
| 反応 | 内容 | 行動・感情の特徴 |
|---|---|---|
| Fight(闘争) | 脅威に対して反発・対抗する | 怒る・抵抗する・攻撃する |
| Flight(逃走) | 危険から距離を取る | 逃げる・避ける・退避する |
| Freeze(凍結) | 身動きが取れなくなる | 息を止める・思考停止・緊張・恐怖で硬直 |
| Flop((脱力/遮断) | 体と感情のシステムがシャットダウン | 脱力・無気力・解離・意識が遠のく |
| Friend(融和) | 相手との協調で安全を確保 | なだめる・助けを求める・共感して関係を保つ |
Freeze(フリーズ)とFlop((脱力/遮断)の違い
もともと「Freeze(フリーズ)」は、
「闘争(Fight)」「逃走(Flight)」に続く第3の防衛反応としてまとめられていました。
しかし、トラウマ研究や神経生理学の進展により、
Freezeの中には2つの段階があることがわかってきました。
ひとつは、「動けないけれど、恐怖や状況を認識している状態」。
もうひとつは、「恐怖や痛みを感じないように、意識や感情の反応が極端に低下する状態」です。
この後者のほうを、近年では「Flop(フロップ)」と呼び、
「凍りつき(Freeze)」とは区別して説明されるようになりました。
| 反応 | 意識 | 感覚 | 目的 |
|---|---|---|---|
| Freeze(凍結) | ある | 強い緊張・恐怖 | 危険をやり過ごすための一時停止 |
| Flop(脱力/遮断) | 弱い〜途切れる | 感覚が切れる・無感情 | 生命維持のための最終防衛 |
Friend(融和)とFawn(迎合)|人とのつながりで安全を確保する社会的防衛反応
近年のトラウマ心理学では、「協調や共感によって安全を確保する(Friend)」の他に「相手に合わせて衝突を避ける(Fawn)」といった社会的防衛反応が注目されています。
どちらも、人間が“他者との関係”を利用して危険を回避しようとする生存戦略の一種です。
- Fawnは、相手の機嫌を取ったり、自分を抑えて波風を立てないようにする反応。
- Friendは、共感や協調を通じて、相手とのつながりを保ち、状況を落ち着かせようとする反応です。
この2つは形は少し異なりますが、どちらも「人とのつながりを使って安全をつくる」という点で本質的に同じグループに属しています。
社会的関係が強いほど安心を感じる人ほど、この防衛反応が起こりやすいとも言われています。
ストレスに弱い人・強い人の違いは?闘争逃走反応の“感度”を決める要因
同じ状況でも、すぐにパニックになる人もいれば、冷静に対応できる人もいます。
この違いは「性格の問題」ではなく、脳や神経がストレスをどう感知するかという“感度”の違いによって生じています。
ここでは、その感度を左右する主な4つの要因を紹介します。
①遺伝・気質・経験によって「反応の強さ」は異なる
人のストレス反応には、生まれ持った体質(遺伝)+育ちや環境(経験)の両方が影響します。
具体的には、以下のような要因が「闘争逃走反応の感度」を決定づけます。
- 遺伝的要因:
扁桃体や副腎の反応性が高い人ほど、ストレスに敏感。
生まれつき「危険を察知しやすいセンサー」が強めに働く傾向があります。 - 成育環境:
幼少期に怒鳴り声や不安定な家庭環境を経験すると、脳が「常に危険を警戒する状態」を学習してしまうことがあります。 - ストレス経験:
過去に強い不安や失敗を経験した人は、似た状況に出会うだけで過剰反応しやすくなります(条件づけ反応)。
つまり、「ストレスに弱い人」ではなく、「脳がストレスに素早く反応する人」と言い換える方が正確です。

②HSPはなぜ刺激に過敏で疲れやすいのか
HSP(Highly Sensitive Person/非常に敏感な人)は、刺激に対する感度が一般より高い気質を持っています。
脳の感覚処理や扁桃体の活動が活発で、次のような特徴があります。
- 光や音、匂い、他人の感情などを強く感じ取る
- 周囲の空気を読もうとして脳が疲れやすい
- 「怒られた」「拒絶された」という出来事を深く記憶してしまう
HSPの人は「ストレスに弱い」のではなく、“感受性が高い脳”を持っているのです。
そのため、他人よりも闘争逃走反応が作動しやすく、長く続きやすい傾向があります。
③トラウマ・不安傾向が“過剰反応”を引き起こす理由
トラウマ体験(過去の強い恐怖・ショック)がある人は、扁桃体が「過剰警戒モード」に入りやすくなります。
たとえば、過去に怒鳴られた経験がある人は、似たトーンの声を聞いただけで交感神経が反応することがあります。
また、慢性的な不安傾向がある人も、常に軽い“闘争逃走モード”に入っている状態です。
そのため、体がリラックスできず、次のような不調が現れやすくなります。
- 頭痛・肩こり・胃痛などの身体症状
- 常に考えすぎて疲れる「脳の過活動」
- 小さな出来事で心拍数が上がる・動悸がする
この状態が長く続くと、ストレスの「抵抗期」→「疲弊期」(セリエの理論)へと移行し、心身のエネルギーが枯渇してしまいます。
④安全な環境では反応は自然に弱まる
人の脳は、危険を察知すると過敏になりますが、安心できる環境では自然と落ち着きを取り戻します。
ポリヴェーガル理論では、これを「腹側迷走神経(安心モード)」の働きによるものと説明しています。
安心モードを取り戻す具体的な条件は、次の通りです。
- 信頼できる人との穏やかな会話
- 自然の音やゆったりした音楽
- 深呼吸・瞑想・ストレッチなどでのリラックス
- 「ここは安全だ」と脳が感じる静かな空間
つまり、ストレスに強くなるための第一歩は、「安心できる環境を自分でつくること」です。
脳は常に変化し、繰り返し安心を体験することで、「過剰反応しない習慣」を学んでいくのです。
過剰な闘争逃走反応を抑えるには?ストレスをリセットする心理学的アプローチ

闘争逃走反応は、もともと「命を守る」ための正常な反応です。
しかし、現代社会では、実際に命の危険がないのに常に緊張モードが続くことが多く、これが不眠・疲労・不安・イライラなどの原因になります。
ここでは、過剰なストレス反応を落ち着かせるための心理学的アプローチを4つ紹介します。
どれも特別な知識がなくても、日常で実践できる方法です。
①深呼吸・マインドフルネスで副交感神経を活性化
闘争逃走反応のスイッチが入っているとき、交感神経が優位になっています。
この状態から抜け出すには、反対側の副交感神経を働かせ、「安全モード」に切り替えることが効果的です。
💡おすすめの簡単呼吸法
- 鼻からゆっくり4秒吸う
- 2秒息を止める
- 口から6秒かけてゆっくり吐く
これを3〜5回繰り返すだけで、心拍数が落ち着き、脳に「もう安全だ」という信号が伝わります。
また、マインドフルネス瞑想もおすすめです。
「呼吸に意識を向ける」だけで、扁桃体の過剰反応が抑えられ、ストレスホルモンの分泌が減ることが多くの研究で示されています。

②認知再評価で「脅威」→「挑戦」と捉え直す
人のストレス反応は、出来事そのものではなく、それをどう“意味づけ”するかで決まります。
これを心理学では認知再評価(Cognitive Reappraisal)と呼びます。
たとえば、
- 「緊張している」→「集中できている」
- 「失敗したら終わり」→「学べるチャンス」
- 「怖い」→「自分が成長できるタイミング」
というように、脅威を挑戦として再解釈すると、ストレス反応がポジティブなエネルギーに変わります。
緊張を「体の準備」と捉えた人は、心や体の反応を前向きに活かしやすく、結果としてパフォーマンスも高くなりやすいと言われています。

③感情を抑えるより「観察」する
怒り・不安・焦りといった感情を「消そう」とするほど、脳は逆にその感情を強化してしまいます。
そこで有効なのが、感情をコントロールするのではなく“観察する”という方法です。
たとえば次のように言葉にしてみましょう。
「今、私は不安を感じている」
「体が少し緊張しているな」
こうして客観的にラベリング(名前をつける)すると、前頭前野が働き、扁桃体の興奮が落ち着くことが分かっています。
つまり、「感じている自分を観察する」だけで、脳の安全モードが戻るのです。

④ 安全を感じる時間を増やす(休息・自然・人とのつながり)
ポリヴェーガル理論の観点から言えば、ストレス反応を鎮めるには、「安全」や「つながり」を感じる時間を意識的に増やすことが大切です。
たとえば:
- 自然に触れる(公園を歩く、木を見る、空を眺める)
- 信頼できる人と会話する(“共感”が腹側迷走神経を活性化)
- 音楽や香りを使って安心感をつくる
- 夜はデジタルから離れる(SNS・ニュースは脳を緊張させる)
こうした行動は、「ストレスを減らす」というより、脳に“ここは安全だ”と再学習させる訓練です。
繰り返すほど、闘争逃走反応のスイッチが入りにくくなります。
💡まとめると:
ストレスを「ゼロ」にするのではなく、“安全モードに戻れる体と心”を育てることが大切です。
闘争逃走反応とどう付き合うか|現代社会での“生き延びる知恵”

闘争逃走反応は、もともと人間が生き延びるために備わった生理的防衛システムです。
問題なのは、この反応そのものではなく、現代社会で過剰に作動し続けてしまうことです。
ここでは、「闘争逃走反応」とうまく付き合うための心の姿勢と実践的な考え方を紹介します。
ストレス反応は「生存のためのシステム」
まず理解しておきたいのは、不安・怒り・緊張といった感情は、どれも「危険からあなたを守ろうとする脳の警報」です。
- 怒り → 自分を守る力
- 不安 → 注意力を高める力
- 緊張 → 集中するためのサイン
つまり、ストレスはあなたを守る“味方”でもあるのです。
闘争逃走反応を「排除すべきもの」ではなく、“安全を守るための反応”として受け入れる視点が大切です。
反応を理解すれば、心と体のセルフケアが上達する
ストレスに対処する第一歩は、「自分の体がどう反応しているか」を観察する習慣を持つことです。
たとえば、
- 「心臓が速くなってるな」
- 「肩がこわばってる」
- 「呼吸が浅い」
と気づくだけで、扁桃体の興奮が下がり、前頭前野(理性)が働きやすくなります。
これは“自分を理解する”モードへの切り替えでもあります。
このプロセスを繰り返すことで、ストレスが来ても「反応に気づいて戻せる」ようになり、結果的に自己調整力(セルフレギュレーション)が高まります。
怖がるのではなく、反応を“観察”し“選択”する
「不安を感じたらダメ」「怒りをなくさなきゃ」と思うほど、反応は強化されてしまいます。
大切なのは、感情や体の反応を“敵”にしないこと。
たとえば、こう考えてみましょう。
「いま、私の体が“守ろうとしてくれている”んだな」
この視点に立つと、闘争逃走反応を“理解できる味方”として扱えるようになります。
そこから冷静に、「今は戦うべきか」「逃げるべきか」「一度休むべきか」を選択できるのです。
これは、反応に支配される生き方から、反応を使いこなす生き方への転換です。
「理解→受容→行動」へとつなげる心理の成熟プロセス
闘争逃走反応をコントロールするうえで重要なのは、理解→受容→行動という3段階の流れを意識することです。
1️⃣ 理解する:自分の体と心がどんなときに反応するのかを観察する
2️⃣ 受け入れる:その反応を否定せず、「守るために働いている」と認める
3️⃣ 行動する:安心を取り戻す行動(呼吸・休息・対話など)を選ぶ
このプロセスを繰り返すことで、ストレスに対して「反応しない力」ではなく、“反応しても戻れる力”が育っていきます。






